米テラブスは、事業領域の一つに携帯事業者のネットワークで使う装置を持つベンダーだ。現在同社は、WiMAX事業者向けにモバイルIPのサポートや認証などをする「ASNゲートウエイ」という装置を販売している。それに加え、携帯電話事業者やそのMVNO(仮想移動体通信事業者)向けにトラフィック制御に関連した新ソリューションを提供開始する。その概要を、日本法人の森チャネル・セールス・マネジャーに聞いた。(聞き手は山崎 洋一=日経NETWORK)

携帯事業者向けに新ソリューションを提供することにしたのはなぜか。

テラブス チャネル・セールス・マネジャー 森茂人氏
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 スマートフォンに動画などのリッチコンテンツを配信するサービスが目立つようになってきた。従来からの携帯電話も、コンテンツは文字ベースのころに比べリッチになってきている。これらがトラフィックの増加をもたらし、携帯電話事業者のネットワークの中にあるSGSN(Serving GPRS Support Node)およびGGSN(Gateway GPRS Support Node)というパケット交換機を圧迫しつつある。対策としてはSGSNやGGSNを増設すればよいのだが、これらは高価で今後も増設し続けていくのは大変だ。

 スマートフォンのインターネット接続料金には上限があるため、トラフィックが増えても収益増にならない。当社はこうした事情を踏まえて、インターネットに向かうトラフィックを“迂回”させるソリューションを考えた。

トラフィック増にどう対応するかは、携帯事業者によって考え方が異なるのでは。

 確かに携帯事業者ごとに考え方は違うし、ベンダーが用意するソリューションも一様ではない。例えば、無線LANを使ってそちらにトラフィックを回す方法がある。当社が考えたのは、携帯電話事業者のネットワークに当社の「SC9100」という装置をつなぎ、パケットの種類によってはここを経由してインターネットに向かわせる方法だ。それによってSGSNやGGSNの輻輳を起こさないようにする。

どのようにして迂回を実現するのか。

 3G(第3世代携帯電話)のW-CDMA方式を採用している携帯事業者のネットワークだと多くの場合、通信は基地局を束ねるRNC(Radio Network Controller)、それを束ねる「アグリゲーションルーター」、SGSN、GGSNを通り、インターネットあるいは携帯事業者のサービスサイトに抜けていく。このとき、RNCとSGSNの間にはパケットを送受信するトンネルが構築される。

 この構成に対して、アグリゲーションルーターにSC9100を接続すると迂回が可能になる。SC9100は、RNCとSGSNの間でやり取りされる“コントロールメッセージ”というものをスヌーピングして、従来はRNCとSGSNの間に張られていたパケット送受信用のトンネルを、RNCとSC9100の間にも張れるようにする。これで、パケットを見て迂回させたりSGSNやGGSNに向かわせたりできるようになる。SC9100は、パケットの中を細かく検査する、いわゆるDPI(Deep Packet Inspection)にも対応する。ユーザー単位またはアプリケーション単位で迂回させる/させないを決めることも可能だ。

 SC9100の導入にあたり、ネットワークに大掛かりな変更を施す必要はない。SC9100は通信事業者が求める安定性や信頼性、パフォーマンスを確保しており、4G(第4世代携帯電話)をにらんだアーキテクチャにしている。アプライアンスからシャーシ型まで複数ラインアップを用意しており、様々な規模のネットワークに対応できる。

SC9100は既に販売中の装置だが、オフロード装置として使うにはどのようにすればよいか。

 現在SC9100は、WiMAX事業者向けのASNゲートウエイとして販売している。米Crearwireで採用されたことが公表されており、国内でも採用実績がある。今後ファームウエアを書き換えれば、トラフィックを迂回をさせられる装置として使えるようになる。さらに別のファームウエアにすると、GGSNとして使えるようになる。ただし、これらの機能を一緒に動かすことはできない。

 ファームウエアの書き換えには、近く対応する予定だ。オフロード装置およびGGSN装置としては、3.5Gはもちろん、LTE、4G(IMT-advanced)も対象として、携帯事業者とそのMVNOにデモを実施したりしながら売り込んでいる。