中国で現地のRubyコミュニティで活動し、Rubyの普及活動を行っている日本人がいる。天狗ソフトウエアディベロップメント 総経理の増満工将氏である。増満氏は中国の無錫でIT企業 天狗ソフトウエアディベロップメントを設立、Rubyによるビジネスの可能性を探りながら、Rubyイベントのスタッフを務めるなど普及のための活動を行っている。2010年6月にはRubyConfChina2010を開催し、まつもとゆきひろ氏を基調講演に招く予定だ。増満氏に中国でのRubyの普及状況や、普及活動の実際を聞いた。(聞き手は高橋 信頼=ITpro

中国でのRubyの普及状況は。

天狗ソフトウエアディベロップメント 総経理 増満工将氏

 着実に広まっている印象があります。現在、主に中小企業がRubyを利用していますが、中国の大手ECサイトAlibabaが20万以上の学生が参加しているSNSサイトでRuby on Railsを採用するなど、大企業でも採用が始まっています。大手オークションサイト淘宝(タオバオ)でもRubyエンジニアを募集しています。大手Webゲームメーカー5173.comもRubyコミュニティShanghaionrailsを支援するなどRubyに注目しています。

 日本企業がかかわった事例では、中国の大手オフショア開発企業浪潮の無錫の拠点が3年前に日本の中古車オークション向けにRubyを使用した例があります。

 Structured CommonsElctechといった、中国でオフショア開発を手がけている米国企業や、中国のIT企業RedAgideoCaibangziといった企業がRubyを利用しています。

 最近では、CompTIAの上海進出にあわせ、Rubyの教育を行う教育機関も出てきました。

 コミュニティとしては上海のShanghaionrailsと北京のBeijinonrailsがあります。Shanghaionrailsが設立されたのは3~4年前です。当初からインターナショナルで、設立時の勉強会から米国人が参加していました。日本人メンバーは私とKEMBO社CTOの佐々木真弥氏がいます。

 Shanghaionrailsのメンバーは500名を超える規模です。会員も全国に散らばっています。3カ月に1度の定期集会の際には、40~50名が集まります。中国全土では北京が200人程度、成都が数十人程度、大連が数十人程度、広東が200人程度でしょうか。全国では2000~3000人規模になると思います。

 中でも、杭州のコミュニティは自分たちでメタプログラミングの勉強会を開くなど、レベルの高いメンバーがいます。北京の月に1度のミーティングの技術レベルもなかなか高いと思います。

 中国のIT産業育成は国家レベルで毎年ばく大な予算がつけられ人材育成、産業育成、外資企業の誘致が行われています。Java技術者は毎年何十万人単位の供給があります。日本人の発想を超える規模です。

 Rubyについては、このような政府の援助がない全くオープンな言語としてじわじわと普及しているという印象です。すなわち、オープンソースの理念や、国外での活動に注目し、英語の資料を読み込み、自らもある程度使っている感度の高い優秀なエンジニアがコミュニティに多いことが、C#やJavaのコミュニティと大きく異なっています。