2010年5月28日にアドビシステムズは、クリエイター向け製品の新バージョン「Adobe Creative Suite 5(以下CS5)」の提供を開始する。発売に先立って事業戦略発表会向けに来日した米アドビシステムズのシニアバイスプレジデント兼クリエイティブソリューションユニットゼネラルマネージャのジョン・ロイアコノ氏に、CS5の位置づけや、Androidをはじめとするマルチデバイスに対応するFlashコンテンツの可能性について聞いた。

(聞き手は矢野りん=ライター)


米アドビシステムズのシニアバイスプレジデント兼クリエイティブソリューションユニットゼネラルマネージャのジョン・ロイアコノ氏
米アドビシステムズのシニアバイスプレジデント兼クリエイティブソリューションユニットゼネラルマネージャのジョン・ロイアコノ氏

CS5ですが、前回のバージョンにくらべ「ここが違う」というポイントは?

 アドビは魅力的なコンテンツを制作するツールのベンダーとして知られている会社です。「ピクセルに磨きをかける会社」とでも言いましょうか。今日のデザイナー、デベロッパーに興味を持ってもらうためには、そうした方々の仕事において突破口となり得る機能なり、表現なりができるように、さらなる性能を持たせる必要があると思っています。Adobe Photoshop CS5(以下Photoshop CS5)の新機能はご覧になりましたか? ぜひ見ていただきたいのが新機能の「塗りつぶし」です(下図)。

下の図は、ロイアコノ氏がしたデモと同じ内容を矢野がβ版で再現したもの。ススキが生い茂る構図に映り込んでしまったカメラマンにざっと選択範囲を指定し、deleteキーを押す。前バージョンでは選択範囲内の画像が削除されて背景色が露出するが、CS5では塗りつぶしのダイアログが出現する(左)。「コンテンツに応じる」を選択して実行すると、その範囲を周囲の風景で自動的に埋め合わせる(中央、右)。ここでは操作を2度実行してカメラマンがいた場所を自然なススキ野原に変えた。
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 これは魔法ではありません。被写体の背景をPhotoshop CS5が推測することで実現しています。CS5に移行する動機付けとしては、単に美しいビジュアルが作れるだけでは足りない。圧倒的な作業時間の短縮が求められます。Photoshopで1日3、4時間こうした作業をしている人がいるとすれば、45秒で完結するわけです。Photoshopで生計を立てている人にとってタイムイズマネー。ここまで簡単になれば、アップデートしても元が取れるでしょう。

 もう一つは、開発に関係のある話題です。最近のデザイナーはUIを自らの手でインタラクティブに仕上げたいと考えています。しかも、PCのほかにも、マルチスクリーンに対応する状態で実装したいと。今回、CS5には二つの新しいツールが加わりました。一つはAdobe Flash Builder CS5、もう一つはAdobe Flash Catalyst CS5です。さらにAdobe InDesign CS5(DTP向けツール)にもインタラクティブなFlashコンテンツを書き出す機能を搭載しています。また、エミュレーターツールのAdobe Device Central CS5では、500を超える携帯電話およびセットトップボックスやテレビのプロファイルを搭載しており、Flashの動作をエミュレートできます。

 新しいFlash Playerであるバージョン10.1もリリース予定です。Symbian OS、Android、Windows7、セットトップボックスなど豊富な機器、プラットフォームに対応します。