「1000万円の価値」を示せ

ITを仕事にしているという意味ではプロだが…。

阿多 親市(あた しんいち)氏
写真:中島 正之

 そこを超えた意味合いを込めているつもりです。熟練工なのかもしれないけど、あなたが何の免許を持っているのか分からない。いくらの価値なのか分からない。

 実は当社の社員とベンダーの社員の給料を、全部調べてみました。するとベンダーさんは1000万円を超えたところを中心にいっぱいマルが付いた。ところが社員は、1000万円を超えるところにはほとんどマルが付かなかった。

 社員に向かって、「ほら、これを見ろ。君たちはベンダーを使っているつもりかもしれないけど、ベンダーのほうが給料が何倍も高いよな。同じくらいの仕事をしているのに、おかしいと思わないか」とハッパをかけました。「もし君たちがベンダーだったら、うちはいくら払わなければいけないのか、職務経歴書を基に決める。18カ月あげるから、1000万円のベンダーのエンジニアと同じ価値があることを証明しなさい」というわけです。

 A18Mによって、情報システム部門が本来持つべきスキルを蓄積していこうとしています。例えば運用畑が長かったりプログラム経験がなかったりする社員を、基幹システム刷新の開発現場に送り込んでいます。最初は何をしていいか分からなかったようですが、やはり半年、1年たつと仕事が分かっていきますね。資格取得も奨励しています。

社員の取り組みはどうか。

 みんな必死です。受け取り方は人それぞれですけどね。

 すでに手応えはあります。自分たちのシステムを自分たちがコントロールできる力が付いてきたなというのが私の実感です。社員が取得した資格数は1700~1800近くですが、まだ全員が取得しているわけではありません。3月末までにはみんな何か絶対にそろえてくると思います。一気に社員のレベルアップを図りますよ。

ソフトバンクテレコム 取締役専務執行役員 兼 CISO
阿多 親市(あた しんいち)氏
1982年、島根大学法文学部卒業。同年アイワに入社。87年、マイクロソフトに入社し、2000年から03年まで社長を務める。03年、ソフトバンクBBに入社、常務取締役に就任。06年、ソフトバンクテレコム 取締役 兼 CISO、ソフトバンクモバイル専務執行役 情報システム・CS統括(CISO)就任。通信3社以外にも、ソフトバンク・ペイメント・サービス代表取締役社長、サイバートラスト代表取締役社長 兼 CEOなどを兼任。1958年9月生まれの51歳。

(聞き手は、玉置亮太=日経コンピュータ)