SNSやミニブログなどユーザー自らが配信する情報に加え,ユーザーの行動に関する情報が今,急激な勢いでネットワーク上に集積され始めている。例えば,購買履歴や電車の乗降履歴,携帯電話/スマートフォンのGPSや加速度計などから集まるセンサー情報だ。こうした情報は,人の生活の動きのログであることから「ライフログ」と呼ばれる。

 ライフログの集積が進む一方で,これまでは計算コストが高く不可能だった個人の動きや嗜好の解析といった情報処理が容易になりつつある。コンピュータの単体の高性能化に加え,クラウド・コンピューティングに代表される大規模化が進んでいるからだ。この「情報の集積」と「計算コストの劇的な低下」という二つの動きによって,最近になってライフログを活用したビジネスが現実味を帯び,具体的な議論が活発化してきた。

 ただライフログを解析し活用することは,プライバシ保護の問題に直結する。ところが,プライバシに関する法律はあいまいなうえ,ライフログ利活用のルールを定めた包括的な法律はない。ライフログを活用しようと考えている企業は,羅針盤のないまま進まねばならない状態にある。

 そこで,まずはIT法務の第一人者である牧野二郎弁護士に,現行法の全体像と今後の議論の方向性を語ってもらった。そのうえで,ライフログの主な収集元であるWeb,センサー,映像に分け,それぞれの分野のエキスパートに法律や技術の現状とその課題について話を聞いた。

牧野総合法律事務所 弁護士
牧野 二郎 氏

北尻総合法律事務所 弁護士
壇 俊光 氏

日本情報処理開発協会 データベース振興センター 副センター長
坂下 哲也 氏

京都大学 学術情報メディアセンター ディジタルコンテンツ研究部門 マルチメディア情報研究分野 教授
美濃 導彦 氏