情報システムの運用に携わる企業の相互交流を目的にした任意団体「コンピュータ運用を考える会」が2010年に、設立20周年を迎えた。この間に、運用対象はメインフレームからオープンシステムに変わり、運用の考え方も変化した。同会代表幹事の稲垣 登志男 氏と幹事の八若 光良 氏に、運用現場の“今”を聞いた。稲垣氏は菱食の戦略機能部門(IT・ロジスティクス)統括ITネットワーク本部長代理、八若氏は、日興システムソリューションズ データセンター担当である。(聞き手は志度 昌宏=ITpro)

写真1●コンピュータ運用を考える会・代表幹事の稲垣 登志男 氏
写真1●コンピュータ運用を考える会・代表幹事の稲垣 登志男 氏
菱食で戦略機能部門(IT・ロジスティクス)統括 ITネットワーク本部長代理を務める

コンピュータ運用を考える会の活動目的は。

稲垣 情報システムの運用は、企業のビジネスを支えるうえでとても重要だ。しかし、システムが巨大になり複雑さを増している中では、利用企業とITベンダーとが分け隔てなく、運用のあり方をともに考えていかなければならない。単に運用スキルや運用技術を研究するのではなく、お互いが本音で語り合えることが重要だ。そうした場を作るために、この会が設立された。最近は、若手の人材育成の場にもなってきている。

八若 運用の精度を高めるために各社それぞれが工夫しているが、それでも決して十分というわけではない。コンピュータ運用を考える会では、業種が異なる利用企業や、直接の取引関係にないITベンダーが参加している。他業種での苦労話や工夫を聞けるため、自分たちの運用を考えるうえでも大変参考になっている。

2010年に20周年を迎えたと聞く。

八若 1991年5月に設立された。年10回のセミナーが活動の中心だ。セミナーといっても、参加企業が自らの事例を発表したり、他社のデータセンターを訪れたりしてきた。活動の趣旨から、会員数は20社以下に制限しているが、この20年間の会員企業数は延べ33社、参加人数は5500人に上る。

稲垣 この20年の間に、運用現場では大きく変わったことと、変わらないことがある。変わった点は、運用対象がオープンシステム中心になり複雑さがましてきたことと、運用を前提としたアプリケーション開発の重要性が理解されてきたことだ。

 かつては、開発部門だけでアプリケーションを作り、後は運用部隊任せだった。しかし最近は、「運用がしやすいようにアプリケーションを開発しよう」という考えが広がっている。そのために、開発部隊と運用部隊のコミュニケーションも図られるようになってきた。ただ、納期は短くなる一方なので、考え方は分かっても、その実行が難しいのは事実だ。

八若 メインフレーム時代は、開発と運用の引き継ぎポイントが明確だったが、オープンシステムでは開発者がいつまでもシステムを改修したりしている。マルチベンダー化に伴い、利用企業自身が障害を切り分けるスキルを持つ必要性が高まっている。テクノロジーに関しては、開発部隊よりも詳しくなければならないのが実状だ。