ネットを武器に、メディアミックス推進

 花王は「Webなどのデジタルメディアに強く依存する消費者」といった新しい消費者の出現を大きな変化ととらえ、ネットマーケティングにも積極的に取り組んでいる。日本だけでなく、アジアなどを軸にグローバル展開を加速。マーケティングの第一人者でもある尾﨑社長に、同社のネットマーケティング戦略について聞いた。

花王のマーケティングにおけるネットの役割は。

 ネットには双方向という大きな特徴があって、いわゆる4マス媒体のような一方的なワンウェイのものではない。花王はもともと、消費者をベースにして、消費者の変化をとらえ、我々が出した商品、発信したメッセージや広告、そうしたものが消費者にどう受け止められているかを検証し、(改善の)サイクルを回すといったことをやってきた。私は、インテリジェンスの交換と言っているが、単なる情報ではなくて、ある程度加工されて役に立つ情報という意味でのインテリジェンス。それを我々が発信する。そして、消費者相談センターから入ってくる情報や、小売店さんから入ってくる情報を収集して(消費者との)インテリジェンスの交換をしてきた。

 そこにネットが出てきて、双方向で、ダイレクトにそうしたことができるようになった。ターゲットを絞って関心がある人だけと双方向のコミュニケーションができるようにもなってきた。そういう意味で大きな武器、手段が出てきたと私自身思っている。我々は、まだまだマス媒体中心ではあるが、商品によってネットのウエイトを高めていかなければならないということだと思う。

 また、(消費者の)購買行動が変わってきていて、今伸びている販売チャネルは通販やネット販売だけ。ほとんどの店舗販売は厳しくなってきている。伸びている背景の1つは、ネットで得られる商品情報、購買情報が非常に充実してきていることだ。

 ただ、カテゴリーによって、最初からネットで買うかというと、そうでもない。やはり最初は自分の目と手で確かめて、ある程度状況が分かったらリピーター的に、今度は(ネットで)と変わってくる。このように購買形態、情報交換のやり方が変わっている。これらがうまくリンクしていけば、新しい形の、購買と情報交換のやり方が生まれる。いわゆるマスプロモーション、マスセールスの時代から、かなりセグメント化されたニーズに対しての情報交換と購買手段の提供へと、そういうステージに入っていると思う。

マスとネットで、重視している割合は。

 何とも言えないところだが、女性が化粧品情報などを手に入れるような場合、極端な例で言うと、テレビなどのマス媒体からの情報入手が2割。8割はネットなり、クチコミなり、店頭なり、そうしたところで手に入れている。そういうデータもあるわけで、ものによっては(力の入れ方が)そうした割合になっていく可能性があるということになる。

投下する広告費についてはどうか。

 確かに、マスメディアのウエイトは減っていくだろうが、我々はどちらかというと、こういうカテゴリーの商品が欲しいとか、こういう機能を持った商品が欲しいと思っている人が一番有効に情報を収集している、いわゆるタッチポイントが何なんだということを重視している。それはネットかもしれないし、相変わらずテレビ、あるいは店頭かもしれない。それをある程度見極めて、そこにウエイトをかけていく。

 日本には、日本の消費者のカテゴリーにおけるタッチポイントの在り方があるし、中国には中国のカテゴリーに対するタッチポイントの在り方があって、それぞれ違う。そういうタッチポイントをちゃんと調べて、そこに一番有効な、いわゆるメディアミックスを考えていく。

 いずれにしても、メディアミックスということが非常に大事になってくる。(広告費の)投入の仕方、手段なりがだんだん変わっていく。コミュニケーションの仕方、売るチャネルの選択の仕方、商品の仕様や設計の仕方、こういうものが変わってくる。