エイサーに課題はないのか。
課題ですか、それは当然あります。あなたも課題をお持ちのように(笑)。課題と挑戦は我々の人生の一部ですからね。最大のチャレンジは、スマートフォンのビジネスをどうやって拡大していくか、だと考えています。ノートPCやネットブックで我々が達成したような急成長を、スマートフォンのビジネスでも実現したいと思います。
スマートフォンの市場にアップルはiPhoneを投入し、シェアを獲得している。
アップルのPC戦略は、高機能だが高価格の製品でニッチを狙い、収益性を追求する、というものです。スマートフォンにおいてもそれは変わらないと見ています。スマートフォンの全市場を見ると、iPhoneはさほど大きなシェアをとっているわけではありません。しかもアップルが通信会社に納入する際の価格は大変高いと言われています。
通信会社がお金を負担し、利用者に安く提供しているとなると、通信会社はアップルの価格に満足していないでしょう。アップルが高価格戦略をとり続ける限り、iPhoneがこれまでの成長を続けるのは難しいとみています。
PCの将来について伺いたい。CULVと呼ばれる超低電圧版のプロセサが登場したことによって、従来のノートPCとネットブックの中間に位置する市場が生まれつつある。製品の食い合いにならないか。
高機能ノートPCは伸び続ける
なりません。まず、我々はCULV技術を最初に取り入れたメーカーです。1回充電すれば8時間、つまりほぼ一日バッテリーが持つマシンをいち早く市場に投入しています。このジャンルの製品はこれからも伸びていきます。
一方、通常の高性能CPUを使いつつ、バッテリーを8時間から10時間、長持ちさせてほしいというニーズもあります。こちらについても我々は取り組んでいきますから、こうした高性能ノートPCのビジネスも引き続き拡大していくはずです。というわけで、二系列の異なる製品があって、両者は競合しないのです。
クラウドコンピューティングの時代になると、PCにはキーボードとディスプレイがあればそれで十分、とする考えがある。どう思うか。
クラウドコンピューティングは間違いなく重要になっていきます。複数の人の間で同期をとって仕事を進める、といったアプリケーションには最適であろうし、データを社外に置いてもかまわないと考える企業にとっても有意義と考えます。
しかし、私は一部の人々が予測するほど、クラウドの動きが大きくなるとは信じていません。コンシューマを考えた場合、個人データをインターネット上に果たして置くでしょうか。保存場所がどこなのかまったくわからないという点に対し、恐れを感じるコンシューマはおられます。
というわけで、100%クラウドの世界になってしまうことはあり得ません。引き続き、PCには処理能力とストレージが必要です。これまでほどのパワーと容量はいらなくなるかもしれませんが、PCという形態は不変でしょう。
ジャンフランコ・ランチ氏
(聞き手は、桔梗原 富夫)