[前編]モバイルPCはもっと伸びる,大量販売でさらに低価格へ

ノートPCとネットブックを原動力に、台湾のエイサーは台数シェアで世界第2位のPCメーカーに躍り出た。売り上げ構成は、EMEA(欧州中東アフリカ)が6割、米国が2割を占める。ジャンフランコ・ランチCEO(最高経営責任者)に、日本市場に向けた戦略を聞いた。日本メーカーについては「ライバルは東芝のみ」と断言した。

2009年10月に発表された、2009年7~9月期のパソコン(PC)台数シェア(米ガートナー調べ)で、エイサーは米HP(ヒューレット・パッカード)に次ぐ世界第2位に躍進した。ここまで成長できた強みは何か。

 何と言っても製品の力が大きいと思います。我々は、モバイルコンピューティングを強力に推進しています。メインのパソコン(PC)を持ち歩けることを目指し、高性能で洗練されたデザイン、なおかつ低価格のノートPCを提供することに注力してきました。

モバイルPCに集中して成功

 我々がモバイルコンピューティングに力を入れ始めた2000年当時、モバイルPCの市場はそれほど大きくありませんでしたが、必ず巨大なマーケットになると確信していました。我々は誰よりも、このマーケットを理解していると自負していますし、ビジネスの実績がそれを示しています。ざっと言いますと、我々の売り上げの7割が、ノートPCとネットブックから来ています。

 二番目の強みは、パートナーによる間接販売に徹していることです。ご記憶でしょうが、やはり2000年当時、PCを手掛ける企業は皆、「ダイレクトモデル」の話をしていました。販売会社を通さず、メーカーが直販しないと、PCビジネスは成り立たないと言われたものです。

 しかし、我々はあえて、100%チャネルビジネス(間接販売)で行く、と決めたのです。コンシューマや中堅中小企業といった実際の顧客を抱えているのは、世界各地のパートナー企業です。我々は優れた製品をパートナーに提供することに集中しました。結果を見ていただければおわかりのように、これは勝利をもたらす戦略でした。

 もう一つ挙げれば、効率性でしょう。我々は我々のビジネスを極めて低コストで運営できる体制を作り上げてきました。これも強みとなっています。

PCの値段の限界は199ドル

コストの話が出たが、PCはどの程度まで安くなるのか。将来、「100ドルPC」は可能と思うか。

 PCのコストはこれからも下がっていくでしょう。実際、PCの歴史を振り返ると、この15年から20年の間、コストは毎年5%から10%程度下がってきました。おそらく今後4、5年も同じように下がるとみています。もちろん、ものには限界があり、限界に突き当たると、その最低線で横ばいになると思いますけれども。

 最低線はいくらかですが、100ドルは無理です。「これはいいPCだ」と言われるものを作ろうとしたら、おそらく200ドルが限界でしょう。頑張って199ドルまでは下げられるかもしれませんが。OSとCPUだけで100ドルくらいかかりますから、100ドルPCはあり得ません。マイクロソフトがOSの値段を下げるとは思いませんし。実際、OS以外の部品のコストは過去10年下がり続けていますが、OSだけは下がっていません。むしろ、少し上がる傾向にあります。