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日経コミュニケーション

情報大航海ではグーグルとは異なる領域で勝負できる可能性に賭けた

東京大学生産技術研究所 教授
喜連川 優 氏

2010/02/24

 米グーグルが手を付けていない分野を開拓し日本の競争力を強化する---。そんな目的で2007年4月に始まった経済産業省の情報大航海プロジェクトが2010年3月末に活動を終える。これに合わせて,3月8日に「平成21年度 情報大航海プロジェクトシンポジウム 〜情報爆発時代のイノベーション創出に向けた3ヵ年の取組と成果について〜」を開催する。これに先立ち,戦略委員会議長として同プロジェクトを率いる東京大学生産技術研究所の喜連川優教授に話を聞いた。

(聞き手は中道 理=日経コミュニケーション

情報大航海プロジェクトの狙いは何だったのか。

情報大航海プロジェクトで戦略委員会議長を務める東京大学生産技術研究所 教授の喜連川 優 氏
[画像のクリックで拡大表示]

 端的に言えば,グーグルが手を出していない分野を研究することだ。情報大航海プロジェクトを構想した2006年にグーグルが成功していて,現在もビジネスの中心になっているのは,文字世界の検索だ。文字情報は日々増えていっているが,爆発的に増えるわけではない。この分野は技術的にもブレーク・スルーがあまりない。グーグルが出しているサービスを見れば分かるが,文字検索のバリエーションを変えているだけだ。

 グーグルと同じ文字検索技術を国家プロジェクトで研究していたとして,文字検索におけるグーグルの地位を脅かせただろうか。私はそうは思わない。

 今後,現実世界の情報がデジタルになりネットに流れ込めば,グーグルがビジネスの中心としている文字データは膨大なデータの中のほんの小さな領域でしかなくなる。文字情報以外の情報世界の方が情報量が多い分,大きなビジネス・チャンスが眠っている。文字以外の情報世界とは,例えば,現実社会でやり取りされている金やヒト,モノの動きだ。これをネットに取り込み解析する。この技術を持てば,日本企業が競争を優位に進められる可能性が高まる。

グーグルは最近,携帯電話などを使って現実世界の情報を集め始めている。この流れに日本企業は勝てるのか。

 「勝てるか」と聞かれても,それは分からない。情報大航海プロジェクトでは,生活情報を集めて解析する技術を開発し,革新を阻害する制度や法律の問題点を見いだした。こうしたノウハウの蓄積という面では,グーグルよりも1歩先んじている。勝てるかどうかは,この蓄積を民間企業がいかに活用していくかにかかっている。

情報大航海プロジェクトの成果は何か。

 大きいのは人の行動履歴をマネタイズの原資にできることを示したことだ。グーグルはネット上の言葉を解析し,人の意志を読み取ることを富の源泉にしている。現在,ネット上のほとんどのサービスがこのモデルだ。そうではなく,行動履歴を使えば,もっとユーザーに寄り添うようなサービスを実現できる。

 例えば,NTTドコモが情報大航海プロジェクトで取り組んだ「マイ・ライフ・アシストサービス」では,携帯電話から収集した人の行動パターンから,ユーザーの意志を読み取る。人が書き込む必要がなく,無意識で収集される情報はネット上の情報と比べて膨大だし,これを使えばより精度の高い推測ができる。

 ただ一方で,個人の行動履歴はプライバシの問題と直結する。こうした問題をクリアしながらやっていくのは,国家プロジェクトでなければ無理だった。行動履歴がビジネスになるという考え方は,情報大航海プロジェクト開始当初と比べて,かなり浸透してきたと感じている。

 3月8日に開催するシンポジウムでは,技術面や制度面など,情報大航海プロジェクトの様々な成果をお見せしようと考えている。

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