[前編]1番を目指さないと面白くない,目を向けるべきは「不満」

 何か新しいことに取り組みたい――。こう意気込んでいる読者は多いことだろう。だがやる気だけでは、何もせぬままに1年が過ぎてしまう可能性がある。新しいことに取り組むための心構えについて、ベンチャー企業の草分け的存在であるセコム創業者の飯田亮氏が熱く語る。

ここ1年間、閉塞状況に陥った企業は少なくなかった。

 確かに閉塞感という言葉を多く耳にしました。でも、多くの人が本当の意味を理解せずに、周囲に流されて何となく使っているように思います。

 本当はそう感じていない人まで、閉塞感という言葉を使っているのではないか。そうしているうちに、日本全体のムードが次第に暗くなってしまったように思えてなりません。

 やっぱりネガティブな言葉は使わないほうがいい。前向きに新しいことをやらなければいけません。

ネガティブな言葉を使いすぎる、ということ以外に最近の風潮で気になることは。

 最近がっくりしたのは、次世代スーパーコンピュータ開発の事業仕分けの場で、「世界1位になる必要があるのか」という意見が出たことです。この発言の真意はよくわからないので、発言した個人を批判するつもりはないけれど、あり得ない言葉でしょう。

 「1番にならなくてもいい」というのは、日本の世相を象徴しているせりふでしょう。これはよろしくない。

 ビジネスはもちろん、何事も1番を目指すから、皆やる気になる。そして、価値ある製品やサービスなど、何らかの成果が出てくるわけです。

 新興国や海外の新しい企業は、それぞれの分野で1番を目指している。こうした状況のなか、日本人の多くが2番手を目指すなんてことになったら、もうおしまいです。そもそも2番手に付けるという器用なことは難しくてできませんよ。こんなことを考えていたら、結果として10番ぐらいになってしまうでしょう。

坂を登らなければ楽しくない

とはいえ、2番手は何かと楽だ。

 確かにそう。2番手の企業は、必ず首位に立つ会社からの“おこぼれ”があります。でもそれを認めてしまったら、「おこぼれ社会」になってしまう。

 「私は全部いりません、少しだけ分けてください」なんていう、おこぼれ会社が増えていくのを社会として認めていいものか。私は否定しますがね。

 上を目指して坂を登っていく。こうした気持ちを多くのビジネスパーソンが持たないといけない。しんどいけれども、坂を登っていけば、楽しいことだってある。

 2番手で十分という考え方は、極端に言うと「食えればいい」「着るものがあればいい」というのと大して変わらない。わびしいと思いませんか。

 もっと日本人は自信を持って、何事に対しても今より上を目指すべきですよ。今そうなっていないのは、日本人の持つ弱さだったり、自虐性が強いことだったりするためでしょう。