クラウドコンピューティングへの関心が高まる中、IT機器をデータセンターに集約する動きが活発になってきた。データセンターの効率的な運用に向けては、エネルギーコストの抑制や環境配慮といった視点が不可欠だ。しかし、無停電電源装置(UPS)やラック用冷却装置などを開発・販売するAPCジャパンの内藤眞社長は、「UPSや空調といった設備にも目を向けなければ、本当の効率化は図れない」と言う。(聞き手は福田 崇男=日経コンピュータ)

企業がサーバーをデータセンターに集約する動きが活発になってきた。

 データセンターとそれに関連するサービスの市場は、国内景気が停滞しているにもかかわらず伸びているし、今後も伸びるだろう。どのデータセンターも、消費電力の抑制には力を入れている。特に高性能サーバーを利用する企業は、サーバーやストレージといったハードだけでなく、電力ロスが少ないUPSや、冷却能力が高い空調機への関心を高めている。

 当社の調査によれば、一般的なデータセンターにおける消費電力のうち、サーバーやストレージなどのIT機器が占めるのは約3割しかない。残りの7割は、電源設備や空調機などが消費する。この7割を軽視しては、エネルギーの利用効率が高いデータセンターは構築できない。環境配慮を掲げるなら、まずは設備面からエネルギー効率向上を目指す必要がある。

データセンター設備市場は、他社も力を入れ始めている。

 当社の特徴は、モジューラ構造を推奨していることだ。従来型の巨大なUPSや空調機を導入すると、いくら製品個々のエネルギー効率が高くても過剰な設備投資になりかねない。UPSや空調も、IT機器が必要とする分だけを導入すればよい。そうした理由から、サーバーと一緒にラック内に設置できるUPSや、ラック一体型の空調機を開発・提供している。

クラウドコンピューティングといったサービスが増えれば、企業が所有するサーバー台数は減少する可能性がある。APCの顧客層も、企業からデータセンター事業者に移るのか。

 もちろんデータセンター事業者は重要だ。だが、企業のサーバー室での需要も変わらず大きい。これまでUPSや冷却装置を使っていない企業が少なくないからだ。今は重要なサーバーだけでなく、ストレージやネットワーク機器も停止は許されなくなっている。

 2009年からは、そういった複数種類の機器に電源を供給できる中型のUPSなども提供し始めている。そこでは、接続されている機器への電源供給を、どの順番で停止するかを指定できる。長時間の停電時には、まずサーバーをシャットダウンし、その次にストレージやネットワーク機器の電源供給を停止するといった使い方である。

UPSを導入していても、十分に使いこなせていないケースが散見される。

 小型のUPS製品については、代理店経由の販売のため、当社が直接、利用企業にコンタクトすることはなく、サポートしきれていない側面があった。複数の代理店を経由しているケースもある。

 一部の企業や個人ユーザーは、当社のサポート用Webサイトから利用登録してくれている。登録済みの顧客には、UPSのバッテリー交換時期を知らせるメールや製品情報などを送っているが、登録割合は小さい。

 こうした問題を解消するために、「Partner-Club APC」という代理店向けWebサイトを2010年1月に開設した。代理店の営業担当者が顧客企業に納めた製品情報を管理するためのアプリケーションを提供する。同サイトでは、顧客に納入した製品のバッテリー交換時期などが一目で分かる。すべての顧客を当社が直接支援することは無理だが、代理店からの情報提供を強化することで、顧客の製品活用を促進したい。