サーバー仮想化環境における信頼性の向上は、基幹系システムを仮想化する上で最も関心の高いテーマの1つだ。日立製作所 エンタープライズサーバ事業部の山本 章雄事業部長は、そこを「他人任せにしてはいけない」と語る。ハードウエア・ベースの仮想化機構「Virtage」による高信頼化の実現や今後の開発方針について聞いた。

(聞き手は、Enterprise Platform編集部)


日立製作所エンタープライズサーバ事業部 事業部長 山本 章雄氏
日立製作所 山本 章雄氏

クラウドコンピューティングをどうとらえているか。

 ITが企業経営にとって必要不可欠になった一方で、そのコストを考慮すれば「所有から利用へ」といったクラウドコンピューティングへの期待が高まることは自然だろう。

 しかし、すべてのシステムが、今話題になっているパブリッククラウド上に構築・移行されるとは考えられない。電力や交通、あるいは金融システムなど社会インフラとして機能している仕組みは高い信頼性が求められる。当社は、これらと同等の信頼性を提供できるクラウドの実現を目指す。

柔軟性を持つクラウドに、信頼性をどう付与するのか。

 システムの柔軟性を実現するための中核技術が仮想化だ。この部分を他人任せにしては、高信頼な環境は実現できない。これは何もオープンから離れるということではない。インテルプロセサが標準で持つ仮想化支援機能は、ハードウエアによって仮想化技術を実現する当社のVirtageからも利用できる。

 Virtageは、クラウドの利用料算出に不可欠な時計機能が常に正確に動く、仮想環境上のシステムに障害が発生しても全体には影響を与えない、といった思想の下に設計されている。こうした思想が信頼性につながる。

 グローバル市場において、独自色のある製品を販売することは難しい。だが、欧州などは特徴のある製品を受け入れる土壌があるため突破口はある。部品メーカーからは「面白い製品を作るメーカーだ」と評価されてきた。部品メーカーとの協調なしにものが作れない時代にあっては、こうした評価が息の長い製品供給につながっていくはずだ。

今後の開発方針は。

 Virtageが持つ信頼性と、IAサーバー用仮想化ソフトが持つ柔軟性をいかに共存させるかがテーマだ。柔軟性では他社製品が先行しているが、システムには変えたいものと、変えてはならないものがある。今後は両者のバランスを見極めることがますます重要になる。

 かつてのメインフレームにも、TSS(タイムシェアリングサービス)というサービスを共有するための仕組みがあった。クラウドはまさにこの形態を指向しており、サービス回帰の流れだとも言える。信頼性が高いサービスの提供を実現しようとすれば、当社がもつ技術や経験が生きてくる。