ブログで親近感を醸成、お金をかけず知恵を使う

第1回「日経ネットマーケティング イノベーション・アワード」の優秀賞を受賞したZ会の「Z会ブログ」。同プロジェクトのマネージャーを務める広告宣伝統括室Web戦略統括の寺西氏に、Z会ブログを開設した狙いや、その現状、成功のポイントなどを聞いた。

社員や関係者のブログのポータルとなっているZ会ブログ。どのような狙いで開設したのか。

 社員の声を早く、思いを込めてそのままの形で届ける媒体が欲しかった。塾であれば目の前に講師がいて教えてくれるが、通信教育では目の前にはいない。心理的な距離感を近づけないと、得体の知れない存在になってしまう。Z会の人間、添削者がどういう人かを伝えることで、親近感を感じてほしかったというのが大きい。

 (親近感は)テレビ、新聞では届けられない。ネットで可能になったが、(定期的に届く)メールマガジンではうるさく、公式サイトは「公式見解」になってしまう。見たい人だけ見られればよく、1人1人の見解、Z会に集う人たちの考えを提示することで、誤解なく思いを届けられるようにしたかった。働いている人の声がブログに詰まっていればいいと考えている。

Z会ブログの現状は。

 今のポータル(Z会ブログ)は2007年1月に始め、現在のブログのURL数は80。そのうち、Z会のお知らせなどで10。社内の各部署や、進学教室で教えている講師、添削者、社会人向けのコースで教材を編集している人などが20~30人いて、そのほかに東大生、京大生でZ会のOBや、Z会で何らか発信したい人などがブログを書いている。

 社員でブログを持っているのは10人、プラス「新人社員ブログ」を書く新人。コアメンバーのうち3人が書いた記事は、それぞれ1000記事に達している。

 ブログについては、書きたい人はどうぞという形。強制しても始まらない。私の仕事はブログを書きたい人に対して、プロジェクトを通じて所属部署に認めてもらうようにすること。新入社員は一括して配属前に会社にお願いする。配属前に依頼することがポイントだったりする。

ブログと公式サイトの関係、アクセス数は。

 公式サイトは、リリースなど正式な情報。ブログは正式ではないグレーな部分になる。堅苦しいリリースに対し、裏話はブログに持っていこうとなる。

 アクセス数は、月間のPV(ページビュー)で約25万。2月から3月は35万ぐらいいく。明らかなSEO(検索エンジン最適化)効果がある。例えば、時事問題を扱うメールマガジンの一部をブログに転載しているが、「Yahoo! JAPAN」からよくリンクを張られるのでPVは大きく伸びる。Z会ブログ全体のPVは、公式サイトの1/3程度になることもある。

 (Z会ブログを)立ち上げるときは、他サイトからのリンクを一切張らなかった。ブログ自体でアクセスを引き寄せて、PVの成果が上がってからリンクを張った。そうしないと「テレビCMをやったからだろう」などと言われ、社内にブログの効果を説得できない。指標としては、社内、一般の人にも納得性のあるPVを使っている。

 ただ、それだけでは怪しい面もある。お客線の琴線に触れているかが問題だ。そこで、ルートが明らかなものは除いて、資料請求をする人に何がきっかけだったかと聞いている。すると、Z会ブログは新聞の三大紙の1つと同等の比率になった。全媒体における比率では平均3%、多い月で5%になることもあり、年々上がっている。ネットの中では一番高く、「Yahoo!で検索して」というものよりも多い。

 お客様の心象風景のどこかにZ会ブログが残っている。ブログは、最終的なアクションを起こすときの安心感になる。突然勉強したいと思ったときに、Z会ブログを思い出す。人間は動機1つで資料請求することはまずない。「継続は力なり」だ。