「パッケージソフトを導入したが、当初の予定通りの効果が出ない」――。こう悩む企業は多い。パッケージソフトを導入する際に、どのような点を考慮すれば、その価値を最大限引き出せるのか。米ガートナーでビジネスアプリケーション分野を担当するアナリストのジェフ・ウッズ氏に聞いた。(聞き手は島田 優子=日経コンピュータ)

パッケージソフトの導入効果を引き出すために、利用企業が注意すべき点は何か。

 パッケージソフトの導入が価値を生み出す分野は二つある。一つは「ポイントソリューション」だ。特定の業務に対して、短い期間で導入できる小規模のアプリケーションを指す。もう一つは「正しい方法で導入したERP(統合基幹業務システム)パッケージ」である。

 ポイントソリューションは、企業の中で成熟度が高く、改革よりもコスト削減を優先するような業務が当てはまる。SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)が向く領域でもある。ERPパッケージを導入している企業でも、ERPが提供しない業種ごとに特殊な業務などは、ポイントソリューションが役立つ。

 一方の、ERPパッケージの価値を生み出す正しい方法とは、業務の運用コスト削減を目的にERPを導入しないということだ。ERP導入には明確に“勝者”と“敗者”が存在することが我々の調査で分かっている。勝者は、ERPパッケージを業務プロセスの標準化のために導入した企業だ。敗者は業務コストやITコストの削減を目的にERPを導入している。勝者と敗者の間はどんどん広がっている。

 業務プロセスを標準化するといっても、ERPパッケージの持つ業務プロセスをベストプラクティスとして採用し、それに合わせて業務を見直すという方法を指しているのではない。コンサルティング会社が提示する業務プロセスを採用した企業も正しく導入しているとはいえない。

 企業自らが考えて業務プロセスを標準化したうえで、ERPパッケージを導入した企業が勝者になる。標準化によってイノベーションが生み出せるからだ。自社のことは自らが一番よく知っているはずである。自社の業務プロセスを振り返り、何が戦略的なプロセスであり、何が違うのかを見極められた企業が、ERPパッケージの価値を最も引き出せる。

業務プロセスの標準化とパッケージの導入はどういう関係で進めるのか。

 例えば、給与計算業務や財務諸表の作成プロセスは、自社の競争力を左右する戦略的な業務だろうか。まずは個々の業務プロセスについて、戦略的か非戦略的かを考えることから始めるべきだ。一般的には、企業内で競争力を左右する戦略的なプロセスは一つか二つしかない。