政府ITシステムへのオープンソース・ソフトウエア(OSS)適用を促進する団体Open Source for Americaが2009年7月,設立された(関連記事)。なぜこのような団体が設立されたのか。政府システムへのOSS適用のメリットと課題は何か。米Red Hat副社長,Open Source for Americaボードメンバー,Open Source Initiative会長を務めるMichael Tiemann氏に聞いた

(聞き手は高橋信頼=ITpro編集)

Open Source for Americaの目的は。

米Red Hat副社長,Open Source for Americaボードメンバー,Open Source Initiative会長 Michael Tiemann氏
Michael Tiemann氏
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 Open Source for Americaは,米政府のオープンソース・ソフトウエア採用拡大のための啓蒙や普及促進活動を行う組織だ。Obama大統領は「政府はオープンかつ透明であるべきで,説明責任を果たすべき」と述べている。OSSはその3つを実現するために完璧な方法だ。

 Open Source for Americaには,その趣旨に賛同する人であれば誰でも参加することができる。Open Source for Americaに参加したのは最初12人だったが,設立を発表した時には60人,その1カ月後には1100人になり,今も増え続けている。米AMD,米Google,米Novell,米Oracle,米Red Hat,米Sun Microsystemsなどの企業,GNOME Foundation,The Linux Foundation,Open Source Initiative(OSI)などのオープンソース関連団体,大学などがメンバーになっており,米O'ReillyのTim O'Reilly氏,GPL3の起草者Eben Moglen氏,英CanonicalのMark Shuttleworth氏,The Linux FoundationのJim Zemlin氏らがアドバイザリー・ボードを務めている。

ホワイトハウスの公式サイトがオープンソースのCMS「Drupal」を採用した(関連記事)が,米国政府のOSS採用状況は。

 国防総省や大統領府などがOSSを使っている。米国政府の支出を公開するサイトUSAspending.govでは,2ダースのOSSを使用している。

 すでにいくつかの省庁のシステムで使われているが,もっと使われるべきだ。例えば医療記録など,電子化を拡大すべき領域はまだまだあり,OSSを適用できる領域も大きい。

 9月に,米O'Reillyが主催したカンファレンス「Gov 2.0 Summit」にもこの分野のリーダーが集まり,政府のOSS採用について議論が行われた。

 ホワイトハウスのニューメディアディレクタであるMacon Phillips氏は「OSSは市民参加のためのベストな方法」と発言した。アメリカ陸軍のChief Information Officerである Jeffrey A. Sorenson氏,Program Executive OfficerであるNickolas Justice氏も力強くエンドース(賛同)してくれた。

 といってもまだまだやるべきことは多い。国務省の場合Internet Explolerのセキュリティを維持管理するためにコストかかっている。例えばFirefoxにすれば維持管理コストはかなり減らせるはずだ。啓蒙が必要だ。

 パリで開催されたOpen World Forumでは欧州議会の各政府の代表が議論したが,欧州では,機能が同等であればOSSを優先して採用している。OSSに置き換える際に問題になっているのは,プロプライエタリなソフトウエアからのイグジット(脱出)コストだ。

 景気後退により税収も減っている。OSSはコスト削減のためにも有効な選択肢だ。OSSについて誤解があり,検討対象にならないケースもあった。政府担当者にはOSSに触れて,正しい知識を持ってもらいたいと考えている。