NECは2009年10月1日,「パーソナルソリューション事業開発本部」を新設し,その中にAndroidに関する技術開発を担当する「Android技術センター」を発足させた。その狙いや今後の展望などを,パーソナルソリューション事業開発本部長で支配人の西大和男氏と,パーソナルソリューション事業開発本部技術主幹でAndroid技術センター長の今福力氏に聞いた。

(聞き手は内田 泰=日経エレクトロニクス

Androidの技術選任チームを作られた理由を聞かせてください。

パーソナルソリューション事業開発本部長で支配人の西大和男氏
パーソナルソリューション事業開発本部長で支配人の西大和男氏
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西大氏 日本ではケータイが独自の進化を遂げてきましたが,米Apple Inc.のiPhoneの成功で,ケータイとは使い方が異なるPDAのような製品が消費者に受け入れられるようになってきました。一方で,パソコンでは小型で低価格のネットブックが売れています。今後は両者の中間にある,画面サイズが5~10型の領域に新しい市場ができると考えています。例えば,7型のディスプレイを備えるデジタルフォトフレームなどです。

 ところが,こうした中間市場向けには,これまで確固たるプラットフォームは存在しませんでした。そこにオープン性と安定性を兼ね備えた Androidが登場しました。オープンソースなので自由にカスタマイズできるなど,採用のメリットは大きい。当社としてはLinuxでの機器開発の経験は豊富だし,その経験を生かせるAndroidを使って5~10型の画面を有する商品群をどんどん出していこう,ということでチームを発足させました。

組織の体制や活動の中身などについて教えてください。

今福氏 現在は20人のエンジニアが所属しています。この部署にAndroid関連の技術を集中させるとともに,最終的には,NECのGoogle社対応の窓口にしていきます。 Android技術センターでは最終製品の開発まで手掛けるのではなく,「NEC版Androidプラットフォーム」を開発していきます。標準の Androidには含まれていないソフトウエア・コンポーネントの開発や,ハードウエアのドライバーの拡張などを担当します。

部署名にAndroidを冠するなど力の入れようが伝わってきますが,逆にこの命名などに関して躊躇するような部分はなかったのでしょうか。

西大氏 Androidという固有名詞を部署名に入れることについては,社内からも一部批判がありました。でも,分かりやすい方がいいかと。もちろん,Androidには不安要素もあります。例えば,Google社の長期的な戦略が不透明だとか,Google APIの使用について一部制約がある(編集部注:具体的には制約というより,Google社の認証を取得する必要がある)とかです。

 でも,多少のリスクはあっても,Androidにはそれを吸収できるメリットが十分にあると思います。今までNECは組み込み機器でLinuxを多く使ってきましたが,Androidの採用でそのポテンシャルが上がるのなら積極的に使っていこうという考えです。

Androidはオープンソースで,OSやブラウザーなどがパッケージ化されている分,機器として差異化が難しいとの声も聞きますが。

西大氏 確かにハードウエア単体での差異化は難しいかもしれません。でも,ユーザー・インタフェースや省電力対応など独自機能による差異化の余地は十分にあります。幸い,画面サイズが5~10型の領域は,ケータイやパソコンほど出荷数が大きくない分,いろいろアイデアを詰め込んで変化を付けやすい。 Androidというプラットフォームの上で,さまざまな変化球を投げていくのです。日本メーカーでも韓国や中国のメーカーと戦える領域だと考えています。構図としては,時計業界に近い世界ができるかもしれません。