米ブロケード コミュニケーションズ システムズが、これまでのストレージ業界に加え、ネットワーク業界での存在感を強めつつある。2008年にIPネットワーク機器準大手のファウンドリーネットワークスを買収したほか、米IBMとIPネットワーク製品のOEM契約を締結するなど、データセンターに照準を合わせる。同社のマイケル・クレイコCEO(最高経営責任者)にデータセンター・ネットワークの動向を聞いた。(聞き手は白井 良=日経コンピュータ)

顧客の課題をどう見ているか。

 経済的な課題に直面していることは、世界も日本も変わらない。その結果、ITにかけられる予算が少なくなっている。しかし、どのような経済状況にあっても、企業が扱う情報の量やネットワークを流れるトラフィックは増え続ける。ほとんどの企業が、こうした状況への対処に苦労している。

 この課題を解決するため、我々としては革新的なテクノロジーを開発し続けている。そこで重要なのは、単に製品のコストパフォーマンスを上げるだけでなく、ネットワーク投資に伴うリスクを軽減しなければならないということだ。でなければネットワークの運用コストが高止まりしてしまう。

ネットワーク投資のリスクとは何か。

 データセンターの内部構成に変更を加えること自体がリスクだ。規模が大きいほど、このリスクは大きくなる。現在のデータ量やトラフィックの増大は、過去に例がないレベルのものである。加えて、データの保護・管理にかかわる規制への対応も必要だ。世界全体で8000近いデータ保護に関する法律が存在している。トラフィック増大への対応だけでも複雑なのに、さらに複雑さが増しているのが現実だ。

 こうなってくると、ネットワークを現状のままで運用し続けるわけにはいかない。好むと好まざるとに関わらず、どこかのタイミングでデータセンター全体のアーキテクチャを見直す必要が出てくる。小さな変更で済む場合もあれば、全く新しいアーキテクチャを試すよりほかにないという場合もあるだろう。全世界の企業の3分の2が、データセンターの統廃合など何らかの見直しを図らなければならなくなると予想している。

 ネットワーク投資のリスク軽減に向けては、多様なアーキテクチャの選択肢が存在することが重要だ。データセンターでは米シスコシステムズが非常に強い。だから我々は、その対抗軸になりたい。そのためには、データセンターのアーキテクチャを構成する各種の標準化をさらに進める必要があるだろう。標準規格があれば競争が生まれ、より良い製品が誕生する。

 もう一つ重要なことは、利用企業にとって信頼できるパートナーとなるITサービス会社の存在である。アーキテクチャの変更は大きなリスクを伴うだけに、信頼できるIT企業と一緒に進めたい。そうしたITサービス会社は国ごとに異なる。だから当社は、ネットワンシステムズと2009年9月に戦略的提携を結んだ。日本市場における利用企業の状況を良く理解していることが、提携理由である。

そうした時代にあって、ネットワークエンジニアに求められるスキルはどう変わるのか。

 環境が複雑になっているだけに、エンジニアがそれに対応することが困難になっている。データセンター内にあるすべての機器について、専門的な深い技術スキルを身につけるというわけにもいかないだろう。機器を提供する側としては、運用をより簡単にするツールを開発しなければならないと考えている。ベンダー間の競争軸は今後、運用管理ツールになるだろう。運用を最も簡素化できたベンダーが勝利する。

 運用管理ツールが充実していけば、エンジニアに求められる技術スキルが極端に高くなるということにはならないはずだ。私個人の考えとしては、今後のネットワーク管理者は技術だけを見ているわけにはいかなくなると思う。データセンターの運用ポリシーを管理する立場にもなる。そうなれば経営の知識も必要になってくる。