「パーソナルクラウド」というビジョンを掲げ、NECビッグローブがWebサービスの拡充を進めている。Webサービスを支える基盤として1万台以上のサーバーを運用し、米グーグルや米アマゾンに対抗できるだけのコスト削減に取り組んでいる。基盤技術に関する戦略について、同社基盤システム本部の遠藤由妃夫統括マネージャーと大津裕史マネージャー(システム開発・統括グループ)に聞いた。(聞き手は白井 良=日経コンピュータ)

1万台という規模はグーグルやアマゾンに比べると見劣りする。コスト面で対抗できるのか。
遠藤統括マネージャー:十分に対抗できるレベルだと考えている。仮にアマゾンのようなリソース貸しサービスを提供するとしても、同じくらいの料金を設定できる。
サーバーインフラのコストを分析すると、特に効いてくるのは運用と構築のシステムエンジニアリングの部分だ。ハードウエアのコストは長いスパンで見ると微々たる額になる。運用の自動化や自動復旧の仕掛けを導入することで、トータルコストを減らせる。
具体的にどのような基盤になっているのか。
遠藤統括マネージャー:Xenを使って仮想化したサーバー、ストレージ、ネットワーク、Webサーバーソフト、アプリケーションサーバーソフト、データベース管理ソフトなどからなる。これらを基盤部門が用意し、アプリケーション部門の要請に応じて必要なリソースを割り当てる。現在力を入れているのが、リソース割り当て作業の自動化だ。作業コストを削減できるし、サービスを迅速に開始することにもつながる。
自動化のためのツールは自社開発した。CPUパワーやメモリー、ストレージ使用量、IPアドレス、制限するIPアドレスなど必要な情報を入力すれば、サーバーから、ネットワーク、負荷分散装置、データベース、ストレージまでを一括設定できる。これまでも個々の設定には自動化ツールを開発し使ってきたが、インフラすべてを自動設定するのは今回が初めてだ。
5~6年をかけてベンダーフリーのツールを開発
ネットワーク機器の設定まで自動設定する企業は、ほかにはあまりないと思う。サーバーとスイッチの物理配線をあらかじめ済ませておいて、VLAN(バーチャルLAN)の設定を変えることで接続を変える。アクセスコントロール・リスト(ACL)は、初期状態ではすべて制限しておいて、必要に応じて開放していく。これらのすべてが自動設定ツールで一括設定できる。
運用管理システムに対しても自動設定ツールが情報を提供する。サービスが稼働するサーバーについては、運用管理システムが、HTTPリクエストを送り常にレスポンスを監視している。そのため、運用管理システムが必要な、サーバーのIPアドレスといった情報を自動的に提供する。設定の手間を減らせるし、設定忘れなどの不備を防げる。
同様のツールは、2002~2003年にグリッドコンピューティングが全盛だった時代に米サン・マイクロシステムズが出していた。しかし、メーカーが保証できる装置しか設定できなかった。ベンダーフリーのツールが必要なので、5~6年かけて開発してきた。2009年10月から商用環境での利用を開始する。
自動化ツールの導入で、アプリケーション部門の申請からリソース準備までの期間を1週間以内に短縮する。これは承認フロー込みの時間で、実際の設定作業は数時間で終わる。従来はサーバーやネットワークなどで設定を担当する部署が分かれていたこともあり、リソースの準備までに4週間かかっていた。