680万世帯が使うレシピ,ユーザー満足を徹底追及

レシピ投稿などができる料理サイト「クックパッド」を運営するクックパッドが2009年7月に、東京証券取引所マザーズ上場を果たした。パソコン向けサイトの月間ユニークユーザー数は680万人を超え、PV(ページビュー)は3億5000万を超えて成長を続けている。同社の設立者である代表執行役の佐野氏に、現状と今後の戦略を聞いた。

上場の狙いは。初値は公募価格9500円の約2倍となる1万9100円だったが。

 上場は、資金調達方法の多様化もあるが、大きな目的が3つある。1つは、社会的信頼を高めること。12年間やってきて、エンドユーザー、主婦の信頼感は広まっているが、ビジネスとしての認知はあまりされていない。(広告主などと)取引を始めるに当たって、「クックパッドは誰?」というところからスタートする。事業の成長の上でボトルネックになっている。上場によって社会的信頼を高めることが、事業の加速で重要になる。

 男性への認知向上も目的の1つだ。ユーザーは20~30代の女性。その世代の人口の4分の1はクックパッドを月1回は使っている。逆にユーザーの97%が女性なので、40~50代男性の認知度が圧倒的に低い。食品や広告の業界の最前線で意志決定をしている人たちの認知度が低くいろいろ努力をしてきたが、上場を機にビジネスとしてのクックパッドに興味を持ってもらえる。

 そして採用。人材が非常に重要なので、安心して働ける、就職できる会社になるために、上場によって、一定のレベルを超えるということになる。

 初値については、世の中の期待をすごく感じる。事業をぶらすことなく、成長させていきたい。

今回の調達額は約13億円だが、何に使うのか。

 使い道は、主にサーバー投資と、技術面への投資だ。クックパッドの事業ドメインは、「料理を楽しくする」という領域。そうであれば「食」にこだわらない。例えば、料理が楽しくなる自動車があってもいい。我々が見ている範囲は広く、チャレンジングなマーケットといえる。

 今、リリースしているサービスは(開発に取り組んだもののうち)1割に満たない。チャレンジしていくことが重要だ。我々は“ほんわかした料理サイト”だが、強みはテクノロジー。その強みに資金を使うことは、競争力を高めることにつながる。

食品メーカーなどの販促を支援するマーケティング支援事業と広告事業、有料課金サービスなどの会員事業の3つが主力事業になっている。

 それぞれ事業は始まったばかり。(売り上げの55%を占める)マーケティング支援事業は、食品や飲料メーカーがお客様になる。食品業界だけで広告費を年間3000億円使っている。不景気といわれる中、その支出配分の見直しが進んでいる。効果のないものは見直し、効果のあるものに使おうとメーカーが真剣に考えている。680万世帯はクックパッドで料理レシピを決めていて、我々はその価値を提供できる。実際の効果で見てもらえるのは、我々にとってチャンスだ。