ZTE USA ワイヤレス・テクノロジー&マーケティング担当バイス・プレジデントのトンリン・シェン氏
ZTE USA ワイヤレス・テクノロジー&マーケティング担当バイス・プレジデントのトンリン・シェン氏
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 ZTEは中国の大手通信機器メーカー。日本通信やウィルコムに通信カードを提供するなど,日本での存在感も増してきている。2009年7月22日~24日まで東京で開催された「ワイヤレスジャパン 2009」に合わせて来日したトンリン・シェン氏に戦略を聞いた。同氏はZTEの技術と戦略を全体を監督する立場にある。(聞き手は中道 理=日経コミュニケーション)

ZTEの現在の戦略は。

 モバイル・ブロードバンドが本格化してきた日本や欧州,米国などの先進国に対して,ソリューションを提供していくことだ。ZTEはこれまで主に発展途上国を狙って携帯電話の基地局を提供してきたが,この市場だけにとどまるつもりはない。

モバイル・ブロードバンドの領域で競合他社とどう戦うのか?

 競合他社と同等の品質をより安い価格で提供することに加え,ZTEのプラットフォーム戦略をアピールして,市場を取っていきたい。

 先進国と比較して中国は労働コストが安い一方,ZTEで働く中国人は先進国並みの教育を受けており技術力が高い。しかも,従業員の平均年齢が30歳以下と若く,非常によく働く。そのため,エリクソンなど,大手通信機器ベンダーと同等の品質の製品を安く提供できる。顧客のニーズにも素早く応えられる。

 さらに,ZTEの基地局は,構成する部品を共通化し,モジュールやソフトウエアの変更でGSM,W-CDMA,CDMA2000,WiMAX,LTE(long term evolution)などの様々な無線方式に対応できる仕組みにしてある。時代とともに,無線方式をバージョン・アップさせたり,新しい無線方式を追加する場合に,これまでの投資を無駄にしなくて済む。これがプラットフォーム戦略だ。

 3年程度で無線方式がコロコロと変わる発展途上国の通信事業者向けに考えてきたソリューションだが,モバイル・ブロードバンドの時代になって先進国のニーズにも合致してきた。

具体的には?

 例えば,CDMA2000 1xEV-DOサービスを提供している先進国の通信事業者でLTEへの移行の道筋についての議論がある。ここに我々の基地局を採用してもらえれば,移行シナリオの幅が広がる。例えば,カナダの事業者はCDMA2000からW-CDMA,HSPA(high speed packet access)に移行し,その後,LTEに行くという道筋を描いているが,我々の製品では同じプラットフォームですべてをサポートしている。CDMA2000 1xEV-DO Rev. AからLTEに直接移行するケースでも同様だ。

端末はどうか。

 現在はモバイル・ブロードバンドの主役が通信カードであるため,ここに注力している。携帯電話端末は,中国やインドなどで出荷しているが,日本ほどリッチな端末は出していない。先進国で我々の携帯電話端末が入り込める余地が出てくれば,機会をとらえて出荷したい。