パーク24 代表取締役社長の西川 光一氏
パーク24 代表取締役社長の西川 光一氏
写真:北山 宏一

 時間貸し駐車場「Times」を運営するパーク24は、2008年3月にマツダレンタカーを買収してカーシェアリング事業に参入。西川光一代表取締役社長は「2009年内にカーシェアリングの国内シェア1位を目指す」と自信をみせる。マツダレンタカー買収の狙いとカーシェアリング事業の可能性、さらに、景気と密接に関係する交通量から見た足元の経営環境について、西川社長に話を聞いた。(聞き手は多田 和市=コンピュータ・ネットワーク局 編集委員、「経営とIT新潮流」編集長)

2008年後半から日本経済は、「100年に一度」といわれる不況に見舞われていますが、最近になって、景気の底を迎えるのではないかという楽観論も出てきています。西川さんは今の経済状況をどのようにとらえていますか。

 駐車場の稼働率だけを見ると、2008年の2月くらいから非常に厳しい状況になっていました。ですから、体感できる景気動向よりも半年くらい早く、データ上には不況の影響が出ていたことになります。

外部環境をしっかり読んでいれば、大きな業績変化はない

 しかしながら、駐車場のビジネスはストックの商売ですから、外部環境の読みを大きく間違えなければ、それほど大きな業績変化があるものではありません。要は、交通量が増加するのか、フラットなのか、減少するのか、そこを見極めれば手の打ちようがあるのです。そういう意味では、今の状況は、目に見える不況下にあるので、経営としては安定しているといえます。

 当社は10月決算ですが、2008年11月から2009年の10月にかけて、駐車場の稼働に影響する交通量は穏やかに悪化するだろうという前提で経営しています。交通量イコール経済活動、経済活動イコール景気ですから。景気は、年内いっぱいは穏やかに悪化するというのが当社の前提です。景気が底を打ったのではないかという楽観論も出始めましたが、やっぱり改善の兆しが一向に見えていないですし、足元も非常に厳しい状況が続いています。

2006年6月の道交法改正以降、経営環境はジェットコースターのように変動

前期(2008年10月期)は初の減益でした。

 駐車場業界の経営環境は、路上駐車の取り締まりを強化した2006年6月の道路交通法(道交法)改正以降、ジェットコースターのように変動していました。前期の減益要因は、2006年以降2年半の間、外部環境の読みが外れたというか、予想以上の変化があったためです。

 道交法改正前の4月くらいから、駐車場の稼働率が異常な高さを示し始めました。例えば、小さいエリアの駐車場の稼働が急に跳ね上がるというのは、イベントが開催されたとか、何か要因があるということで理解できるのですが、全国の駐車場の稼働率全体がじわじわ上がり始めたのです。当社は「あの取り締まり方では、道交法改正の影響はそれほど大きく出ないだろう」と考えていたのですが、ふたを開けてみると、平均稼働率が5%以上も上がっていました。

 6月以降、同業他社は一斉に駐車料金を値上げしました。当社も、あまりにも高稼働で満車の状態が続くので、8月くらいから値上げを実施しました。稼働率を少し下げて、ピークの時間帯でも安心して利用できる環境を作ろうという狙いだったのですが、法改正による稼働率上昇は、半年もしないうちに沈静化に向かいました。丸1年たったころには、法改正前の状態にほぼ戻りました。しかし、駐車場業界全体の駐車料金値上げの傾向は丸2年くらい続いたのです。

2008年に入って駐車料金を是正し、経営の方向を修正

 駐車料金が高止まり、利用者の許容範囲を大幅に超えてしまっていたので、当社は2008年に入ってから駐車料金の是正をしようと、経営の方向を修正しました。修正のかじを切った途端に、景気が一気に冷え込み交通量が減少しました。しかも、一時期ガソリンも大幅に値上がり、そういったマイナス要因がいくつも積み重なって、前期は初の減益になりました。

 ただ、繰り返しになりますが、外部環境の読みさえ外れなければ、打つ手は分かっていますので、収益を確保することはできるのです。今期(2010年10月期)は増益が可能でしょう。来期も、うまくいけば2けた近い経常増益が可能だと思います。

今期を増益決算にするために、具体的にどのような手を打っているのですか。

 まず、駐車料金の是正です。先ほど2006年6月以降、業界全体で駐車料金が上がったという話をしましたが、当社の実績を見ますと、2006年4月から2008年4月までの2年間で、平均単価が10%も上がっているのです。当社は、駐車場ビジネスを1991年から始めたのですが、91年から2006年の15年間で、平均単価の上昇幅は25%です。15年間かけて25%しか上がらなかったものが、2年間で10%上がっています。急激な値上げですよ。

 道交法改正で急激に拡大した駐車場の需要は、その後、急激に縮小しました。そのため、駐車場の需要と駐車料金とが大きく乖離(かいり)してしまった。そこを是正しようというわけです。

新規開拓から、既存の駐車場の収益改善や修繕にシフト

西川 光一氏
西川 光一氏

 是正というと、「上げた料金を下げるだけ」と理解されがちですが、もう少し正確に説明しますと、「一つひとつの駐車場を精緻(せいち)に見ていって適正な料金を設定する」ということです。そのために、当社は今期、営業部門の体制を変えました。これまで、営業部門250人のうち、開発担当者が7割、運用担当者が3割だったところを、今期は、開発担当者4割、運用担当者6割というように、運用担当者を倍にしました。特に、東京や大阪などの駐車場密集地域では、運用担当者を3~4倍に増やしました。開発担当者というのは、駐車場を新規開拓する者です。一方、運用担当者は、既存の駐車場の収益改善や修繕を担います。

 従来の体制では、運用1人が350から400くらいの駐車場を受け持っていましたが、そんなに担当数が多いとマクロの対応はできてもミクロの施策が打てません。今期の営業体制では、運用1人が受け持つ駐車場の数は100くらいです。100なら、2週間あれば全部見に行けますので、一つひとつ緻密(ちみつ)に見て行って、料金を適正化しました。

 駐車料金を下げると一時的に利益が減ります。逆に、値上げすると一時的に利益が増えるのですが、6カ月目で逆転現象が起こります。値下げした駐車場の稼働率は上がり、値上げしたほうの稼働率は下がり、利益の絶対額が逆転するわけです。一つひとつの駐車場について、料金と稼働率の適正化を地道に行って、まずは売り上げ面を改善させました。