注目の書籍

好評発売中!

IT業界徹底研究就職ガイド2013年版

IT/ネット業界で働くと いうことを分かりやす く解説。2013年3月卒 業の学生向けの1冊。

ソフト開発

インタビュー

ITpro

理想的なユーザー・エクスペリエンスを実現するのは技術だけではない

米Microsoft Developer Division
Vice President Scott Guthrie氏

2009/07/30

 マイクロソフトは2009年7月11日に,リッチ・インターネット・アプリケーション(RIA)およびメディアの実行基盤となるソフトウエアSilverlightの新バージョン「Silverlight 3」を提供開始した。Silverlight 3によるユーザー・エクスペリエンス(UX)の開発や,2010年のリリースを予定している統合開発環境「Visual Studio 2010(VS 2010)」について,米Microsoft Developer Divisionで副社長を務めるScott Guthrie氏に聞いた。

(聞き手は中條 将典=ITpro)


米Microsoft Developer Divisionで副社長を務めるScott Guthrie氏
写真●米Microsoft Developer Divisionで副社長を務めるScott Guthrie氏

米Microsoftで最年少の副社長ということですが,経歴を教えてください。

 私は12年半前に,大学からMicrosoftに入社しました。その前に大学で1年間,Microsoftでインターンをしていました。入社してからは,Webサーバーのチーム,.NETにおける最初の数名のチームを経て,現在は.NET Framework, Silverlight, ASP.NETなどを主に担当しています。今でも1日に数時間はプログラミングをしています。使っている言語はC#です。

2009年7月11日にリリースしたSilverlight 3に対する反応はいかがですか。

 とても良いですね。多くのメディアのほか,Twitterでも取り上げられました。7月16日に提供を開始したSilverlightアプリケーション開発ツール「Expression Blend 3 RC版」は,提供開始後4,5日で10万以上のダウンロードがありました。特にデザイナーの関心が高いようです。

 Silverlight 3の最大の特徴は,高精細なHDビデオを視聴できることです。ハードウエアのアクセラレーションを通じて,ネットブックやラップトップで1080pの高精細画像を見ることができます。ほかに,ブラウザの外でアプリケーションを動かせることも評判になっています。これらを使ってデザイナーや開発者は,他に無いような結果を出すことができます。

Silverlight 3で理想的なユーザー・エクスペリエンス(UX)を実現できると考えますか。

 理想的なUXを実現するのは技術だけではありません。開発者とデザイナーの繰り返し作業で,いかにして最適なデザインを実現するかが重要です。Expression Blend 3が備える「スケッチフロー」は,その作業を支援するものです。繰り返し作業のプロセスにおいて,アイデアに対して継続的にフィードバックを得て,手を加えることでより良いUXを実現できます。

 チームによって異なりますが,一般に,デザイナーと開発者は問題に対する取り組み方が違います。当然,それぞれで求められるツール,エクスペリエンス,能力も異なります。我々が開発者向けにVisual Studio(VS)を,デザイナー向けにExpression Studioを提供しているのはそのためです。

 ここでキーになるのは,他社の同様の製品と異なり,VSとExpression Studioの両方で,同じプロジェクト・ファイルを利用できることです。出来上がったものを“壁の向こう側”に渡すのではなく,両方のツールで絶えず編集作業を行うことが,より良いUXの実現には重要です。Expression Blend 3が備えるスケッチフロー機能は作業の流れに合わせて,プロトタイピング,イテレーション,最適化に役立つように工夫されています。

Microsoftは開発者に対しては非常に訴求力がありますが,デザイナーに対してはまだ改善の余地があると思います。

 デザイナーに対しては二つの方向からアピールしていきます。一つはデザイナーにとって自然な感覚のツールを提供することです。Expression Studioでは,VSのようなツールボックスではなく,アセットパレットを使います。いかにしてPhotoshopのような操作感覚にするか,ということを考えていきます。もう一つは,PhotoshopやIllustratorのアセットを,Expression Studioのプロジェクトへインポートできるようにすることです。インポート機能については,アドビのFlashより優れていると考えています。

 次のステップは,デザイナーやエンドユーザーが魅力を感じるUXをどう実現するのか,ということです。Silverlight 3では,デザインツールの操作性の自然な感覚や統合について,デザイナーから良いフィードバックを得ており,彼らが求めているものを提供できていると思います。Expression Studioの開発には,アドビやマクロメディアなどから転職してきた技術者も関わっており,デザイン指向のDNAが取り入れられていると言えます。

2009年5月にベータ版をリリースしたVS 2010の今後の予定は?

 セカンドベータを年内に出して,そこですべてのフィーチャーをそろえる計画です。最終的なリリース時期については発表していません。セカンドベータに対する利用者からフィードバックを取り入れた後で,ということになります。セカンドベータ2の次のRC(リリース候補)版は,パブリックRCではなく対象者を限ったプライベートRCになるかもしれません。

VS 2010の特徴について教えてください。

 VS 2010ではWPFを使ってUIを再構築しました。ただし,メニューやツールバーの構造は2008と同じで,既存のユーザーになじみやすくしています。VS 2010に合わせてリリースする.NET Framework 4.0についても,新しいフィーチャーを加えていますが,既存ライブラリとの互換性を維持しています。

 VS 2010では初めてツール・レベルでテスト駆動開発(TDD)をサポートするようになります。さまざまなテストをベースにした機能の開発やワークフローに対応しており,エンタープライズ開発で役立つはずです。

 関数型言語「F#」が組み込まれることも特徴です。インテリセンス,プロジェクト・サポート,デバッグが可能になり,Visual BasicやC#と同じレベルでプログラミングができるようになります。F#に対する関心は,金融,エンジニアリング,数値分析,統計分析などの分野で高まっています。

 .NET Framework 4.0では並列ライブラリを追加し,複数のプロセサで動くコードを簡単に書けるようになります。それに合わせてVS 2010では,並列プログラミング用のデバッグ機能をサポートします。複数のスレッドのコードが動いているときに,それぞれのスタックの中身を見ることができるようにする仕組みです。

 また,.NET Framework 4.0には,ソフトウエア・ファクトリで言うところの「コントラクト(契約)」の概念が入ります。コードの中でコントラクトに基づいて,どのようなメソッド,クラスであるべきかを宣言することで,ソフトウエア・ファクトリのコンセプトの良いモデルを実現できると考えます。

この記事に対するfacebookコメント

nikkeibpITpro

読みましたか? 〜 未読記事をご紹介