挑戦意欲のある人が集まれば新事業にも、もの凄い力が出せる

 日立製作所が、“総合力”を最大限に発揮するための組織・制度の変更を急いでいる。2009年4月に、情報処理分野のトップについた高橋直也副社長は、研究開発分野も掌握し、テクノロジの融合を図る。ストレージ機器の設計者として、同事業を立ち上げた高橋副社長のものづくりへのこだわりは強い。「強い製品が高い収益を生む」と繰り返し、中でも主力機「BladeSymphony」に注力する。「社会インフラを支えるシステムの部品には、自社で責任を持てる製品が必要」と判断しているからだ。(聞き手は谷島 宣之=日経コンピュータ編集長、写真は小久保 松直)

4月1日付で情報事業のトップに就任したが、この人事をどう受け止めたか。「待ってました」か、それとも「えーっ」だったか。

 淡々と拝命しました。情報事業はこれまでずっとやってきましたし、日立グループCIOとして社内とグループの情報システムを見るように言われましたが、これは地続きの仕事です。ただし今回から、研究開発も担当することになりまして、日立グループCTOも兼務しました。

 これは情報事業関係の研究開発だけではなくて、オール日立の研究開発です。「結構、奥が深いだろうな」という感じは受けました。やはり研究開発というのは日立にとって非常に重要な部門ですから。

 ただ、私の任務は事業と研究開発をもっともっときちんとかみ合うようにすることです。その点では、これまで情報事業に関してですが色々取り組んできました。もともと研究所とは結構一緒にやってきているのですね。

 例えば今、環境配慮型データセンターというテーマを掲げています。これを追求しようとすると、情報事業部門だけでは実現できなくて、研究開発部門との連携が不可欠です。さらに他の事業部門、例えば電力や電機といった部門をすべて融合させて事業を進めていく必要があります。

ITとR&Dの両輪駆動に

情報事業と研究開発を一人の副社長が見るのは今回が初めてか。

 おそらく初めてです。やはり事業部門と研究開発は両輪だから、これまで以上に連携させようということでしょう。両方がしっかりかみ合って動いているときは物凄い力が出ている。この力をもっともっと出していく。

(小久保 松直)

 私は情報事業の中では、ストレージシステムが長かった。ご存じのように、その中核コンポーネントのハードディスクについては米IBMの事業を買収し、日立グローバルストレージテクノロジーズ(日立GST)を作った。

 ストレージについても、研究所の先行的なアイデアが重要です。ただ、研究者が頭の中で想像しただけでは足りない。ストレージの場合は、米国サンタクララに研究所の分室を持っていますので、そこで非常に大切な大きな顧客と色々会話をしています。そういう活動を通して、先行ニーズと言いますか、フィーリングがつかめることもある。

 そうやってお客様のニーズを得たとき、今度はシーズ、つまり技術的な要素はこれとこれにしたい、と決まってくる。それによって段々と次はこういうものを開発していこう、そうすればお客様のニーズに合った商品になるから事業のポートフォリオが強くなるね、と話が進む。こんな仕事は事実として私もずいぶんやってきました。こういう形をもっともっと出していくことが、やはり日立としての強みだと思います。