KLabの真田哲弥社長は,モバイル・ビジネスの草分け的な存在である。NTTドコモのiモードにいち早く注目,創業したサイバードを2年でIPOに導いた。GClueの佐々木陽社長は,学生時代からiモード向けのアプリケーション・ソフトウエア開発を手掛け,最近はiPhoneやAndroid向けのソフトウエアを量産している。6月19日開催の「オープンモバイル・コネクションズ2009」で対談を予定している両氏の打ち合わせの席に参加,オープン化するモバイル・ビジネスの現状について聞いた。

(聞き手は菊池 隆裕=日経コミュニケーション

GClueの佐々木陽社長(左)とKLabの真田哲弥社長(右)
GClueの佐々木陽社長(左)とKLabの真田哲弥社長(右)

真田社長は,昨年から国内で販売が始まったiPhoneや,間もなく登場するAndroid搭載の端末(NTTドコモの「HT-03A」)についてどう見ているでしょうか。

真田 一言で言えば,「iモード以来のわくわく感」です。実は,その間にミクシィやFacebookをはじめとする「Web2.0」の動きがありましたが,残念ながら乗り過ごしてしまった。今度は,しっかり“波に乗ろう”と思っています。

佐々木社長は,この分野でとても精力的です。iPhone,Androidにはじまり,マイクロソフトのWindows Mobile,最近はノキアが始めたアプリケーションのオンライン販売「Ovi」にも注目していますね。ここまで手広くやっている開発者は,世界でもほとんどいないのではないでしょうか。

佐々木 それぞれのプラットフォームにアプリケーションを先行投入することでどんなポジションが取れるのか,一通り見てやろうと思いました。その結果,現時点での主戦場はiPhoneだと思っています。ビジネスをするならApp Storeです。しかし,App Storeには競合が多い。注目を集められる工夫が必要だと感じています。ほかはまだ発展途上ですが,競争が少ないので注目が集まりやすくなります。先行者メリットを享受しようと思っています。

App Storeについて,真田社長はどう見ていますか?

真田 先日,元NTTドコモの夏野剛氏(現,慶應義塾大学 特別招聘教授)に会いました。彼はiPhoneの大ファンのようですが,「App Store」はダメだと言っていました。コンテンツをうまくコントロールしないと,マーケット全体がつぶれてしまうという指摘です。iPhone,App Storeは総合的にバランスがとれているとは思いますが,まだまだ改良が必要だと思っています。

佐々木社長は,6月8日に始まるアップルの開発者会議「WWDC」(Worldwide Developers Conference)に参加されるそうですね。WWDCでは,iPhoneのソフト基盤の最新版「3.0」が正式発表されると言われています。開発者として,どんな期待感がありますか。

佐々木 コンテンツ課金がやりやすくなると言われているので,既存のプレーヤにチャンスが広がるのではないかと思っています。例えば,占いなどiモードをはじめとする国内のモバイル向けサービスで培ったコンテンツの販売先が広がると思うからです。

佐々木社長は,海外市場にも積極的ですが,真田社長は海外市場をどう捉えていますか。

真田 ほかの多くの会社と同じように,海外では痛い目に遭いましたが,再び注目しています。モバイルはアジア市場が伸びています。米国などでは,まずパソコンがあってモバイルは脇役といった感じですが,アジアでは,日本と同じようにまずモバイルがあって,パソコンの存在感が相対的に低くなるのではないでしょうか。アジア市場では,日本のモデルが参考になると思います。

6月19日のイベントでは,iPhoneやAndroidアプリに関してさらに突っ込んだ議論,そして最近Androidの人気が高まっているという中国をはじめとする海外事情などの報告も楽しみにしています。