Webアプリクリエーター 渡嘉敷守氏
Webアプリクリエーター 渡嘉敷守氏

 米グーグルの携帯電話開発プラットフォーム「Android」を採用した日本初の端末が,NTTドコモから2009年6~7月に発売される。従来,「Androidマーケット」では海外の開発者のみが有料アプリを販売できたが,国内で有料アプリの配信が始まるころには,日本の開発者も有料アプリが販売できるようになる見通しである。このため,日本でもAndroidのアプリ開発が本格化していきそうだ。米グーグルが2008年に開催したAndroidアプリの開発コンテスト「Android Developer Challenge」で1次予選突破の経歴を持つ渡嘉敷守氏に,開発者から見たAndroidの印象や今後の動向を聞いた。(聞き手は,松元 英樹=日経コミュニケーション)

Androidアプリ開発の近況は?

 2008年8月にコンテストが終了したあとは,2008年10月のAndroidマーケットの開始に向けて,アプリ公開の準備を進めた。開始後は,2週に1本のペースで追加し,現在までに9つの無料アプリを配信してきた。これまでに,コンテストにも出品したファッション・アイテムを管理する「MyCloset」のほか,シンプルな機能の録音用アプリ「Voice Recorder」や写真を連続撮影する「Continuous Shoot」などを作成した。

 アプリの開発にあたっては,とにかく早く出さないと成功しないと考えた。世界中の開発者がアプリを次から次へと登録するため,人気を獲得してランキング上位に表示されなければ,埋もれてしまうからだ。幸い,Voice Recorderはシンプルな操作性が好評で,公開から時間が経過しても継続してダウンロードされている。iPhoneのアプリでも言われているが,有料アプリでは上位100位に入らないと商売にならないという状況になるのではないか。

ユーザーからはどんな反応があったのか。

 開発者がアプリをアップロードすると,米グーグルが審査をすることなく,即座にマーケット上に登録される。すると,その直後にユーザーからコメントが届くこともある。

 例えば,黒電話のようなダイヤル式の画面で音声通話の発信ができる「DialCall」というアプリでは,当初の容量が約2Mバイトだった。これをアップロードしたところ,容量が大きすぎるというコメントが即座に届いた。0~9の数字に個別の効果音を用意していたため,それだけのサイズになった。そこで,音声ファイルの数を少なくして,再びアップロードし直した。

 とはいえ,ユーザーのために頑張ろうと頻繁に更新すると,逆に迷惑だといわれることもあった。現在では,開発者がアプリを更新した場合は,ユーザーのアプリも自動的にアップデートされる。毎日ダウンロードが発生すると,迷惑というわけだ。

 こうしたやり取りをしていると,Webページという薄皮一枚を介してユーザーとつながっている感覚になる。開発者自らが店番をしているようなものだ。これには,いいところもあれば,悪いところもある。攻撃的なコメントもあるので,責任感が強い個人の開発者は,コメントを見るのが辛くなってくるかもしれない。無審査で登録される分,ユーザーのサポートは開発者が背負わないといけないという側面がある。

今後は有料アプリも手がけるのか。

 今後は有料アプリもぜひ作りたい。報酬を返す仕組みがなければ,開発者はクオリティの高いものを目指そうという意識にならない。無料アプリの中には,手間をかけていないのでは,と感じるものもある。「寄付するからいいものを作って欲しい」というユーザーの意識と,それに応える開発者の関係が構築できれば,アプリ市場はより活性化していくだろう。