クラウドへの移行を支援 市場は変化の渦中にある

 システムインテグレータ最大手NTTデータを率いる山下社長は若い頃、汎用コンピュータ用のデータベース開発に取り組み、プログラムを自ら作っていた。その経験から山下氏は「人生のどこかで手を動かしてプログラムを作る仕事を経験した方が絶対に面白い。20代あるいは30代の前半くらいまでに真水の仕事をどれだけやったか、それがその後の人生の豊かさにつながる」と同社幹部としては異例の発言をする。(聞き手は谷島 宣之=日経コンピュータ編集長、写真は小久保松直)

2009年度、100億円近い投資を計画していると聞く。狙いは何か。

 100億円のうち、40億円くらいかけようと考えているのが、「倍速開発」という案件です。これが一番大きい投資になります。我が社としてぜひともやらないといけないのは、お客様のお気の召すまま、ご希望のオーダーメード・システムを、パッケージ・ソフトを使った場合と同じスピードで作って差し上げる、という開発サービスです。

 お客様のことを考えますと、自分の特有の何かをやりたい、なおかつ競争だから速くやりたい、という要望は必ずあります。営業の売り上げが伸びるとか、このサービスを早くやればお客様が喜ぶとか、こうすれば業務コストが劇的に下がるとか。こういったアプリケーションはパッケージにはない。

(写真・小久保松直)

 しかも、お客様のご要望は年々高度になっていて、ある種のパラダイムシフトを望んでおられます。例えば自動車メーカーが一番いい例ですけれど、今までのタイプの車をそのまま作るのではなくて、ハイブリッドのものを作らなければいけないとか、電池自動車を用意しないといけないとか。今までの車の延長上のものを速く安く、ということもありますが、自動車産業のパラダイムシフトするようなものも求められている。

 ほかの業界も同様ですね。皆さん、変化を求めているし、環境問題があってお客様に出す商品をハイブリッドに変えると同時に、お客様自身の生産工程についてもエネルギーをもっと少なくしたい、そこにITを使えないのか、と考えておられます。しかも、できる限り、早くやりたいと言われる。その時、何年もかかると申し上げる訳にはいかない。

3倍速の開発を目指す

 倍速、できるものなら3倍速でやりたい、というお客様に応えるために、開発プロセスの抜本改善と、ソフト生成の自動化に取り組んでいます。色々やった結果、開発工数の3割はほぼ削減できることが見えてきた。もう少し頑張って開発工数を5割削減したい。

 私どもの過去の開発実績の平均値を取ると、機能拡張のような案件を除く、ごく普通の開発の場合、開発工数の比率は、要件定義と設計が3、製造が4、試験(テスト)が3です。ソフト生成自動化ツールを使ってみると、要件定義と設計のところは変わらないですけれど、4の製造の所がおおむね2で済む。すると試験にかかっていた3が1減って2に。つまり「3、4、3」が「3、2、2」になるから3割減です。

 画面はほとんど自動生成が可能で、ロジックのところができないけれども、ある程度チューニングしておけばロジックも自動生成できる。手で作っていたから試験が必要だった訳で自動化すると試験も劇的に下がります。

 今言っているのは、もっと自動化を進めて、4から2まできた製造のところをもう半分減らして1にしたい、ということ。そうすると3、4、3が3、1、1ぐらいでいけるのではないか。合計で5ですから半減、つまり倍速達成となる。

 要件定義と設計の方も今、色々なツールを作っています。結局、いくら自動生成しても、要件に問題があって手戻りが起きてしまうと倍速どころではなくなる。なるべく手戻りを起こさないような仕組みで、要件定義での見やすさ、モックアップをぱぱっと紙芝居のように見せるとか、そういうツールがそろってきました。

 これがうまくいくと、要件定義の精度が上がり、それにかける時間も今よりは少し短くなる。ただし、要件定義まで短くしようとすると、問題を起こしやすいから、3なら3でしっかり時間をとり製造工程で減らせばいい。

 今お話したようなことをなんとか後1~2年で実現させたい。さらに開発プロセスの実態を自動モニタリングする仕組みを一緒に盛り込んだりするので、ざっと40億円ぐらいかけようか、ということです。