中古車販売ガリバーインターナショナルの羽鳥兼市代表取締役会長は、1994年に同社を設立。中古車を画像だけで販売するという、当初は非常識と考えられていたビジネスを成功させた。自動車メーカーの大淘汰、少子高齢化、若者のクルマ離れ、環境問題…様々な問題が自動車業界を取り巻くなかにあっても、羽鳥氏は「自動車の未来は楽しいことばかり」と語る。羽鳥氏がイメージする今後の自動車業界とはどのようなものか、話を聞いた。
(聞き手は多田 和市=コンピュータ・ネットワーク局 編集委員、「経営とIT新潮流」編集長)

ガリバーインターナショナル 代表取締役会長の羽鳥 兼市氏
ガリバーインターナショナル 代表取締役会長の羽鳥 兼市氏
写真:丸毛 透

輸出産業を中心に日本経済に大きな影響を及ぼした今回の世界的な金融・経済危機ですが、中古車販売事業への影響はどんなものですか。

 私は、中古車販売に40年以上かかわっています。当然、好景気の時代も不景気の時代も経験してきましたが、中古車のビジネスは、それほど揺れません。景気が良ければ、新車が売れて、下取りの中古車が大量に発生します。それが流通するので、今度は中古車が売れ始める。逆に不景気の時には、新車を買い控えて、中古車に乗る人が増えるので、中古車が売れる。ですから、あまり景気に左右されない業界なのです。

 今回の不況は「100年に一度」といわれる深刻なものですが、当社の中古車販売台数はこの1年間、継続して伸びています。特に今年の1月~3月は、対前年比で180~190%販売台数が増加している状況です。不況の影響が無いなかで、さらに政府からの補助金や優遇税制などの支援があり、自動車の乗り換え環境がどんどん良くなってきている。環境に優しいハイブリットなどは、飛ぶ様に売れています。

今回の不況については、ようやく底が見えてきたという明るい意見も聞かれるようになりました。経営者として、今の経済環境の変化をどのようにとらえていますか。

 当社のビジネスにとっては、光が見えてきたというよりも、全く新しい時代に入ったなという認識です。ようやく、我々の中古車画像販売システム『ドルフィネット』が、人々に受け入れられる時代が到来し、今まさに花開こうとしています。

 我々が中古車の買い取り専門店を作ったのは15年前、1994年のことですが、当時の中古車業界は、あまりにも不透明でした。特に値段に関しては、一般のお客さんには信用し難い。中古車には値段があってないようなものだと思われている。そういう信頼されない業界でした。これは、日本に限らず、米国でも欧州でも状況は同じで、そういう業界として何十年も諦められていました。しかし私は、やはりもっとお客さんに信頼される業界にしていかなくてはと考え、中古車の流通価格を適正化する“流通革命”を起こそうと決意したんです。

羽鳥 兼市氏
羽鳥 兼市氏

 流通革命を起こすには、まず全国500店舗くらいの規模で店舗展開をする必要があると考えました。全国の店舗で、適正な価格で中古車の買い取りをするのです。同じ自動車を買い付けるのであれば、東京でも北海道でも九州でも、同じ価格を提示しなくてはいけません。この仕組みは、当社が初めて実現しました。それまでは、それぞれの地方、店舗、営業マンで値段がバラバラでした。だから、中古車業界は信用されなかったのですね。

 それから、流通価格適正化のためには、買い取り価格だけでなく、小売価格も適正化する必要がありました。そこで、全国どこでも同じ自動車を同じ値段で買える仕組みを作りました。それが「ドルフィネット」です。今までは、同じ車種で、年式や色、走行距離などがほぼ同じでも、展示場や地域によって、50万~60万円も違っていました。これでは、お客さんは何を信じていいか分かりません。

 「ドルフィネット」は98年から実用化しましたが、10年が経過して、ようやく軌道に乗ってきたという実感があります。導入当初は社員ですら、画像だけで中古車を販売するということに対して、お客さんに不安を与えて売れないのではないかと考えていました。でも、よく考えてみれば、「ドルフィネット」はお客さんのための究極の選択肢なのです。