Software AGのMiko Matsumura氏
Software AGのMiko Matsumura氏

 アプリケーションを「サービス」の単位で扱えるようにするSOA(サービス指向アーキテクチャ)に対し,懐疑的な見方をする人はいまだに少なくない。かつて米Sun MicrosystemsでJavaのエバンジェリストを務め,現在は世界を回りながらSOAの啓蒙活動を進めるSoftware AGのMiko Matsumura氏は「厳しい経済状況だからこそ,SOAは不可欠」と断言。一方で「効果を上げるには時間を要する」と指摘する。(聞き手は,田中 淳=ITpro)

厳しい経済状況でIT投資を抑える企業も多い。それでも各社はSOAを実践すべきか。

 こういう時代には,企業に対し例外なく変革へのプレッシャーがかかっている。今後数年,新たな環境で生き抜くには,そのためのインフラが必要だ。

 SOAの考え方は,こうしたインフラの実現に欠かせない。GartnerのアナリストであるPaolo Malinverno氏は「SOAは必然だ」と語っている。私もその意見に賛成だ。

 だが,SOAの考え方を取り入れるのは,企業にとって大きなチャレンジであり,多大な努力が必要になる。ある種の賭けでもある。

ビジネスが成功する確率が高まる

それだけの努力を強いられて,本当に企業は成功を収めることができるのか。

 いま,横軸に「SOAを採用したか,していないか」,縦軸に「ビジネスが成功しているか,いないか」をとった図に企業をマッピングするとしよう。きっと「SOAの採用など考えてもいないが,ビジネスは成功している」企業もあるだろう。「SOAの採用とビジネスがともにうまく行っていない」企業もある。

 一つ言えるのは,SOAの採用はビジネスが成功する確率を高めるのにつながるということだ。SOAに基づいて実現したインフラが,新たなビジネスを実行する際の土台となる。

SOAの真の価値は日本でもあまり理解されていないように感じる。

 SOAのメリットは,ビジネスとITの関係を変革できる点にある。「サイバーの世界でビジネス上の活動を管理する」のが究極の目標だ。すべてを人手で進めるのでなく,すべてを自動化するのでもなく,人とシステムがサイバー空間で連携しながら,業務を進めるという構図だ。

 この変化には当然,時間がかかる。SOAの真の意味を理解していない人は,すぐに成果が得られないことにしびれを切らしてしまう。自動車に乗っている子供と一緒だ。「ねえ,まだ着かないの?」とだだをこねているのと変わらない。