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編集長インタビュー

日経コミュニケーション
2009/06/04
出典:日経コミュニケーション 2009年4月15日号  pp.36-37
(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)

[後編]内線電話機の中身はバラバラ,“ガラパゴス”どころの騒ぎではない

Andoridイコール携帯電話ととらえると,その可能性を見失ってしまう。

 携帯電話市場は全世界で端末が55億台もあり,確かに巨大だ。しかしAndroidの持つ意味はそれだけではない。組み込み機器のプラットフォームにも使える。

 OESFに参加した富士通ソフトウェアテクノロジーズは,組み込み機器向けのAndroidに目を向けている。DLNA(Digital Living Network Alliance)ガイドラインに準拠した情報家電の開発でAndroidに対応するという。

 ただし,Androidを実装しただけではよくない。標準化が大事で,標準化した結果をオープンにしてみんなが参入できるという環境が大事だ。複数の企業が同じ規格でモノを作れるように,共通の世界を作ろうということだ。

 単独でSTBなどにAndroidを積む動きがあるかもしれないが,これを放っておくとメーカーごとに仕様がばらばらになる。番組表へのアクセスやコンテンツ配信などSTBの機能を統一して,共有できるよう規定すべきだ。

これまではなぜ統一しなかったのか。

 電話機でいえば,メーカーは通信事業者からのスペックとオーダー待ちだった。通信事業者の規定にならい,オーダーに向けて機器を作っている。ある程度の数でオーダーが来るので,後はデザインや使い勝手の良さなどで差異化すればよいという考え方だった。

 このとき,スタンダードのセッターは通信事業者だった。異なる事業者が事業者ごとにスタンダードをセットしてきた。

 それがiPhoneではスタンダード・セッターがアップルに替わった。ここで通信事業者から離脱できたが,iPhoneは,ハードもサービスもアップルが握っている。

 Androidでは,グーグルがスタンダード・セッターになり,ハードも含めてオープンにした。ここには携帯電話に限らないプラットフォームが用意されている。我々はそれを組み込み機器に転用しようと考えた。

 内線電話機は,携帯電話でよく言われる“ガラパゴス”どころの騒ぎではなく,見た目はよく似ているが中身はばらばらという状態だ。これは,アプリケーションを開発して載せるという発想がないからだ。

OESFには,アプリケーション開発費を負担するスキームが視野にあるというが。

三浦 雅孝(みうら・まさたか)氏
写真:的野 弘路

 欧州のOMTP(Open Mobile Terminal Platform)では,年会費は通信事業者が7万ユーロ(約900万円)で,ベンダーが3万ユーロ(約400万円)を徴収する。優秀なエンジニアに仕事をしてもらうために,資金を集めてそれを振り分けている。お金を取ることに後ろめたさを感じる日本では,こういうスキームを実践するのは難しいと思うが,それをやってみることにした。

 オープンソースはボランティアが趣味で作るといったイメージがあるが,私は絶対に違うと考えている。このためOESFでは参加企業から1社当たり120万円を集めることにした。60社が参加すると4200万円程度の開発資金になる。その一部を,プロジェクト単位で申請をしてきたところに,アプリケーション開発費として配分する。

 社員が10人でも優秀な技術を持っている会社に,開発費の全額とはいかなくても社員の給料の半分程度は負担できる。作ったソフトをベースに,さらに資金を投じて次につなげていく。こうした仕組みを回すことで,巨大な生産物を作れる可能性がある。そのためにも初年度の10〜11月ころまでに,成果を出すつもりだ。

現在,通信事業者とはどういう話をしているか。

 移動体の通信事業者からいくつか話が来ている。例えばデジタル・フォトフレームに無線の通信モジュールを挿せば,ネットワークにパケットが流れ,事業者はデータ通信契約で収入を上げられるという考えのようだ。

 このほかにも固定系の通信事業者の研究部門とやり取りをしている。提案をしたら,すぐに端末を作って持ってきてくれという話になった。

通信事業者もアプリを開発できるプラットフォームが欲しいということか。

 その研究部門は次世代の電話機がこうなるという提案をしたいようだ。ただし事業者はメーカーではないので端末を製造できないというジレンマがある。電話機はもう成熟し切っており,どこかで大きく変えないといけないと考えているようだ。

 私たちソフト・ベンダーにしても,電話機が昔ながらのままでは,その上で動くアプリケーションを書けないため,面白くない。電話のビジネスにかかわるには端末の販売代理店をやるぐらいしかない。

端末にいろいろな可能性があれば,ビジネスも変わってくる。

 今回,アプリケーションを書けることの魅力が大きいことを改めて認識した。この環境があれば,机の上で検討しても出てこない斬新なアプリケーションが生まれてくる。

 新しい発想をするためには,ネットワークを開放して,さらに端末を開放することが有効だと思っている。

Open Embedded Software Foundation(OESF)
代表理事

三浦 雅孝(みうら・まさたか)氏
1953年5月生まれ。愛知県出身。青山学院大学理工学部修士課程卒業。1978年から富士通にて,ビデオテックスなどの通信システムの開発に従事。1984年にアスキーに転職,マイクロソフトFE本部を経て,INFORMIXリレーショナル・データベースの事業に従事。1995年にINFORMIX Japanに移籍,1996年にパワーソフト代表取締役社長。2001年にウィルメディアを設立し,SIPサーバーの開発を開始。2006年アイ・ピー・ビジョンの最高技術責任者(CTO)に就任,2008年からAndroidによるSIP固定IP電話プロジェクト(CallSmart/Android Project)をスタート。2009年2月にOpen Enbedded Software Foundationを設立し,代表理事に就任する。

(聞き手は,松本 敏明=日経コミュニケーション編集長,取材日:2009年3月25日)

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