ファイルの容量はどの程度になるのですか。
ダウンロード量は簡単に言うとCD一枚分,最大600Mバイトになります。PS1のゲームはプログラム自体は小さいのですが,音楽データがCDトラックに記録されています。音楽データが入っていると容量としてはかなり大きい。
ただ,今のインターネット経由の配信状況を見ていると400Mから500Mバイトくらいのファイルをダウンロードしても,それほど時間はかからない。それくらいの容量は許容範囲かなと考えました。
将来的にPS3のゲームのネットワーク配信を考えると,容量は1Gバイトを超えるでしょう。配信はそういうオーダーで考えています。容量については思い切ります。
eディストリビューションはPS3を買った日から使えますか。
そうするつもりです。
コンテンツをダウンロードする端末は何ですか。
PS3経由とパソコン経由,そしてPSPの無線LANで直接受信する三つです。
オープンなネットワークを利用するというのが基本的なスタンスなので,パソコン経由にも対応します。それだけではなくて,例えば携帯電話経由とか,そういったものもあり得ると思います,特に,ネットワークを制限するつもりはありません。
パソコンでも「PS1エミュレータで遊びたい」という要望が出てきそうです。提供する可能性はありますか。
それもあり得るでしょう。極論すると,最近の携帯電話はどんどん進化していますから,携帯電話の上でエミュレータを動かすことも将来は不可能ではなくなります。そうなると,“バーチャル・プラットフォーム”的なプレイステーションも可能性としてはアリかなと。この議論を進めると「もうプレイステーション4はいらない」とか,だんだん夢の世界に入って行きますが。
もちろん,ハードウエアの開発を止めることはないのですが,ネットワーク上にハードウエアとは一線を画したバーチャルな環境ができあがる可能性があるわけです。
サーバー・セントリックな形態へ
そういう技術も研究開発テーマとしているのですか。
ええ,特に「Cell」(注8)を使うサーバー・システムが重要だと思っています。サーバー側でコンテンツを生成できる巨大な環境を作り上げれば,現在のブラウジング中心のインターネットとはぜんぜん異なった世界ができるのではないかと。
そのとき,極論すれば端末はテレビそのものかもしれません。サーバーで生成された映像をブロードバンドで配信するとなると,クライアントの端末での演算処理はまったく必要ありません。サーバー・セントリックな形態ですね。もっとも,それを越えるとまたピア・ツー・ピアになるかもしれませんが。
PS3とPSPを組み合わせた遊び方は考えていますか。
PS3からPSPへの映像配信もあり得ます。つまり,PS3でレンダリング(注9)した映像を無線LANでPSPに送るわけです。PS3をホーム・サーバーのように家の中心に置くマシンだとすると,PSPは自分に紐付いている情報端末。
PS3の映像がそのままPSPに映るわけですから,PSPがあたかも“バーチャルPS3”になってしまいます。で,その先のネットワーク越しにあるものが何かといえば,それが先ほどのCellサーバーの話になります。
PS3のレンダリング結果をPSPで見るというのは,技術的に検証できているのですか。
それは楽しみにしていてください。
家にあるPS3でレンダリングした映像を外出先でも見られますか。
技術的には問題ないと思っているので,それも視野に入れています。
PSPの画素数を考えれば映像を受ける側のボトルネックはないですよね。ボトルネックがあるとすれば,やはりエンコーディングして送り出す側のPS3でしょうか。
そうですね。だからこそCellのパワーが活きてきます。それだけのパワーがないと実現できません。
PS3が作り出す映像に対して,さらにリアルタイムでエンコーディングしてPSPに送信するのですから,負荷が税金のようにかかってくる。
ユーザーはPS3ではなくPSPがすごいと思うかもしれません。
その分からなくなる点が良いところで,そこがバーチャルな世界だと思います。
今後,PSPはどのように進化しますか。PSPがバーチャルPS3になるのであれば,PSP自体の強化はもう必要ないとも言えます。
いえ,そんなことはなくて,やはり技術者には少しでも良くしたいという追求心がありますから。
(注8) Cell=PS3のCPU。内部に9個のコア(プロセッサ)を内蔵するマルチコア型CPU。
(注9) レンダリング=この場合,3次元コンピュータ・グラフィックスを描画すること。