コミュニティや映像重視広告でアライアンス推進

マイクロソフトが、アドネットワーク事業で「So-net」や「OCN」といった大手サイトとの提携を進めるなど、ネット広告事業の展開に力を入れている。ポータルサイト「MSN」や「Windows Live」、さらに今後「Windows Phone」を日本で展開するコンシューマー&オンライン事業の責任者である堂山副社長に、これからの事業戦略を聞いた。

MSNやWindows Liveの現状はどうか。

 まだ物足りない。MSNは「ポータル」という位置付けだが、それ自体を検討する時期にも来ている。そうした中でMSNでは昨年、「産経ニュース」とのアライアンスにより、新聞系サイトで(アクセス数)ナンバーワンになる好結果を出せた。そこをベースにどれだけ広げていけるかというのが、コンテンツ面での戦略。もう一つが、MSN内でどういう広告を見せていくかになる。マイクロソフトが得意な「メディア+テクノロジー」を本気でやっていく。

 今、リッチメディアや「MOF(マウス・オーバー・フローティング)」のように、広告を長く見てもらえるような動きをページの中に作って、目を誘導することで広告の価値を上げるといった取り組みをしている。また、全日本空輸と手掛けている拡張バナー広告は、(サイトにアクセスすることなく)バナー広告の中だけで予約までできる仕組みになっている。音楽業界などであれば、CDの購入などで人間の“その場の行動”を刈り取ることが可能になる。こうしたことが、我々が広告主に協力できる部分だ。

 Windows Liveは、我々がユーザーを同士をコネクトするコミュニケーションツール。(会員IDの)「Live ID」を使ってフォトシェアリングサービスなどを提供しているが、単に写真をシェアするだけでなく、次はコミュニティを作りたい。例えば富士山の好きな人が集まるコミュニティ。その中でサーチ機能を使って友達を探すことも実現できる。

コミュニティを作り出す上で、ほかのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)事業者などと提携する考えは。

 我々は、自社で大きなSNSを作ろうとしているのではない。我々が欲しいのはサイトではなくて、ユーザーのプロファイル。基本は他事業者とのアライアンスでプロファイルを集めて、(広告配信などのための)ターゲティングをするのがいいポジションと考えている。SNSには「mixi」や「MySpace」などいろいろあるが、これからはどう集まってターゲティングの精度を上げるかが重要になる。それを一緒に作っていきたい。どこのIDを使うかといったことではなく、互いに必要な部分を共通化することでメリットを作り出せばいいと考えている。

提携面では、NTTグループやソネットエンタテインメントなどと、各社のサイトに掲載する共同広告配信事業の開始を発表したが。

 マイクロソフトは現在、ターゲティング機能をフル装備してパフォーマンスを追求できる独自のアドネットワーク「DRIVEpm」を展開している。NTTグループなどとは、これとは別のアドネットワークを作ることになる。(広告主の)ニーズに合わせて複数のネットワークを用意していく。

 現在ネットユーザーの興味・関心は細分化しているが、広告主のニーズからは、細分化したメディアに個別に配信するより、まとめた中でリーチしたい対象をターゲティングする、または広くリーチする方がいい。そこでアドネットワーク化、アライアンスが重要になる。効率のいい広告配信モデルと広告主が分かりやすい仕組みを(他事業者と)一緒に提供していく。ネット経済的に効率のいいものをシェアして、その上で競争するところは競争する。そうした効率的な“エコシステム”を作っていけばいい。