IEEE 802.11b/g無線LANとフラッシュ・メモリーを内蔵し,写真を写真共有サイトやパソコンに自動アップロードできるSDカード「Eye-Fi」。2008年12月に日本での販売が始まり,2009年3月に動画対応版の「Eye-Fi Share Video」「4GB Eye-Fi Explore Video」(以下Eye-Fi Video)の米国出荷が始まった。日本で今春にも登場するEye-Fi Videoについて,米Eye-Fi創業者兼Chief Product Officer(CPO)のYuval Koren氏に狙いと日本での戦略を聞いた。

(聞き手は,高橋 秀和=ITpro


今回のEye-Fi Videoで,写真に加えて動画を無線LAN経由でアップロードできるようになりました。写真と動画ではファイル・サイズからして10倍以上の開きがありますが,設計思想に変化はあったのでしょうか?

米Eye-Fi創業者兼Chief Product Officer(CPO)のYuval Koren氏
米Eye-Fi創業者兼Chief Product Officer(CPO)のYuval Koren氏
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写真1●動画対応版の「4GB Eye-Fi Share Video」。SDHC対応に。
写真1●動画対応版の「4GB Eye-Fi Share Video」。SDHC対応に。
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 創業から今に至るまで設計思想は変わっていません。ユーザーが簡単に写真を共有でき,安全な場所にファイルを保存できるプラットフォームを作るのがEye-Fiの仕事です。

 最初の製品を投入した2007年から,動画も一緒にアップロードしたいという要望が寄せられていました。当時は動画の共有は一般的ではありませんでしたが,今では状況が変わりました。その声に応えたのがEye-Fi Video(写真1)です。

 Eye-Fi Videoでは,動画対応にあたって,6Mバイト/秒の読み出し速度を持つSDHCカードを採用したほか,サーバーの増強,ファームウエアのチューニングなどを実施しました。これらを改良することで,全体的なパフォーマンスを改善できると考えています。

 無線LAN部分の高速化は今後の課題です。IEEE 802.11nは,まだ新しい技術です。実装面積,消費電力などの要件が,モバイル機器向けの組み込み用途で使えるレベルに到達していません。

日本の携帯電話にはカメラと動画撮影の機能が付いています。ただYouTubeに簡単にアップロードできるかというと,そうではありません。MicroSD版があれば,携帯電話のユーザーを取り込めるのではないでしょうか。

写真2●iPhoneで撮影した写真をEye-Fi対応写真共有サイトにアップロードするiPhoneアプリ「Eye-Fi」。Eye-Fiユーザーに無償で提供。
写真2●iPhoneで撮影した写真をEye-Fi対応写真共有サイトにアップロードするiPhoneアプリ「Eye-Fi」。Eye-Fiユーザーに無償で提供。
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 MicroSDへの対応は予定していません。それに携帯電話には,元から通信機能が付いています。

 Eye-Fiは「無線LAN」というハードウエアに固執しているわけではありません。既存の通信機能を持たないデバイスが当面のターゲットであることは確かですが,Eye-Fiがもたらすユーザー体験の多くはソフトウエアによるものです。この部分を提供することで,写真や動画を簡単に共有できる機能を幅広いユーザーに提供できればと考えています。携帯電話事業者とのコラボレーションの可能性も検討中です。

 その試金石となるのが,iPhoneアプリケーションの「Eye-Fi」(写真2)です。iPhoneで撮影した写真を,Eye-Fiが対応する写真共有サイトにアップロードできます。カメラと通信はiPhoneの機能を使う,純然たるソフトウエアです。

 iPhone用のEye-Fiアプリは,今のところEye-Fiカードのユーザー向けに無償で提供しているのですが,単体での提供を視野に入れています。