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 サイボウズは今夏にもグループウエアをSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)で提供する計画だ。不況で企業がIT投資を抑制する中で、従来型のグループウエアのパッケージ販売だけでは大きな成長は見込めない。SaaSではパッケージよりも機能を絞り込み価格競争力を前面に出すことで小規模企業の需要喚起を狙う。サイボウズの青野慶久社長にSaaS事業の計画などを聞いた。 (聞き手は中井 奨=日経コンピュータ)

経済状況が厳しく企業はIT投資を抑制している。サイボウズの最近の事業環境はどうか。

 2009年2月から当社の第13期がスタートしたが、今期の事業環境は相当厳しくなると見ている。今後は、今厳しいと感じているよりもさらに次の波が来るのではないかと思うほどだ。したがって、13期のテーマは一言で言えば「生き残り」。不況をいかに乗り越えていくかが課題だ。

 これまでも不景気に直面したことがあり、ネットバブル崩壊後の2003年1月期の連結決算では減収減益となった。ただ不景気の波自体は今回の方が大きい。それでも今はOfficeだけではなくガルーンも販売しているので、ネットバブル崩壊後の時期に比べるとまだ余裕はある。

具体的な生き残り策は。

 しっかりと売り上げを立てていくために、サイボウズの全社員が営業活動を行う。どんな小さな案件でも着実に売り上げに結びつける。今期も黒字にすること、そして利益率20%は何としても死守したい。

小規模の案件を開拓するのは容易ではない。既存製品だけでうまくいくのか。

 小規模企業向けには、従来のパッケージ製品の売り切り型ではなくSaaSのようなサービス型のビジネスモデルに切り替える必要があると考えている。

SaaSでは既に米グーグルのGoogle Appsが、小規模をはじめ多くのユーザーに支持されており、強力なライバルになりそうだが。

 確かに小規模の企業の間では、Google Appsを選ぶ客も増えている。しかし、我々はグーグルを競合としてそれほど意識はしていない。むしろ、Google Appsは我々のポジションをより明確にしてくれるものだと考えている。というのも、Google AppsはメールのGmailを中心に利用されている。これに対してサイボウズ Officeはスケジュール管理や掲示板に強みがある。スケジュール管理機能ではGoogle Appsと比較してもOfficeの方が使い勝手が良いと自負している。

 一方でメール機能にはそれほど力を入れるつもりはない。そもそもOfficeのバージョン1にはメール機能さえなかったくらいだ。メール機能を安く使いたいという企業にとってはGmailは魅力的な選択肢になるかもしれない。ただしスケジュール管理や掲示板はサイボウズ製品を活用し、メール機能はサイボウズ製品以外を使うという住み分けは可能だ。我々はメール以外の部分でバリューを出していく。