早ければ1年後にも登場する「Windows 7」を視野に、マイクロソフトが動き始めた。「Windows Vista」購入企業に向けた割引販売と、独自アプリケーションの互換性検証が柱だ。一方でWindows 7には「Vistaのマイナーバージョンアップ版ではないのか」という懸念がつきまとう。企業のVista導入が上向き始めた矢先、早くもVistaの“次”が見え始めたのも企業にとっては戸惑いのもとだ。Windowsの企業向けマーケティングを担当する中川哲 本部長に疑問をぶつけた。

(聞き手は玉置亮太=日経コンピュータ、写真は中島正之)

マイクロソフト日本法人コマーシャルWindows本部の中川哲本部長
(写真・中島正之)
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2009年1月にWindows 7のベータ版が公開されました。多くの企業がようやくWindows Vista導入に動き出した矢先だけに、企業ユーザーは戸惑いを隠せません。

 まず申し上げておきたいのは、1月に公開したベータ版は「あくまでも開発者向けである」ということです。アプリケーションの互換性検証に、可能な限り時間をかけたいと考えたからです。

 「Windows 7はこんなにすごいんだ!」と最初からアピールする手もあるでしょう。しかし、やはりまず開発者の方々に互換性の検証や開発スキルをチェックしてもらい、Windows 7向けアプリケーションの開発準備を整えていただく。その上で企業ユーザーや一般の個人ユーザーの方々に広くアピールしよう、といった順序を想定していたのです。決してユーザー企業をいたずらに混乱させる意図があったわけではありません。

企業ユーザー向け説明を2月から開始

 ベータ版の公開後に開いた開発者向け会議「Tech Days 2009」でもWindows 7を説明しましたが、内容は地味なものでした。新しい.NET FrameworkやAPIの解説と、サンプルコードの説明程度にとどめました。ここでも、開発者向けに互換性の検証を訴えることが主眼でしたから。

マイクロソフトの考えがそうだとしても、雑誌やWebサイトにはベータ版の評価記事がたくさん載りました。企業のIT担当者はイヤでもWindows 7の情報を目にすることになります。ベータ版をダウンロードした個人ユーザーも少なくないでしょう。

 ご指摘のとおり、情報提供の方法をさらに工夫する必要があることは確かです。

 ただ当社にとって開発者への情報提供は極めて重要です。ですから今回は、これまでよりも対象範囲を広げ情報を提供するようにしました。以前だと、初期段階にアプリケーション互換性検証を呼びかけるときは、特定の開発者にしか情報を提供していませんでした。しかし、“点”のアプローチには限界があるので、今回はベータ版を公開し、広く開発者に互換性の検証を呼びかけたのです。

 企業ユーザーに対する情報提供は2月下旬から始めました。東京、大阪、名古屋、仙台など、全国主要都市を回って説明会を開きます。景気後退によって、ただでさえ企業のIT投資環境が厳しくなっていますから、企業が投資するに足る製品なのかどうかを判断いただけるよう、きちんと手順を踏んでお伝えしたいと考えています。