モバイル・ウィジェットは様々なプレーヤによる方式が乱立しているように見える。

 確かに少し混乱した状況だったが,ここに来て携帯電話サービスの標準化団体であるOMTP(open mobile terminal platform)が策定する「BONDI」という仕様に集約されつつある。LiMo FoundationもBONDIをサポートすることを決めた。ACCESSも今回,我々のウィジェット・プラットフォーム「NetFront Widget」をBONDI仕様に合わせていくことを発表した。携帯電話事業者,端末ベンダー,ソフト・ベンダーはほぼOMTP BONDIでよいというラフなコンセンサスを得たので,モバイル・ウィジェットの標準化の落としどころが見えてきたと考えている。

 想定していたよりもウィジェットの普及が速く,一つのまとまった仕様にしないとユーザーの利便性を損なうため,誰もが標準化を望んでいた。どの仕様にしようかと動き出す時に,OMTP BONDIはどの陣営からも若干距離があったため,あれよあれよという間に支持を集めた感がある。

 我々はウィジェットでは後発に近いが,BONDIへの対応を正式に表明したソフト・ベンダーとしてかなり早い。これまで携帯電話事業者独自の仕様でウィジェットを提供してきたプレーヤが,我々のOMTP BONDI仕様に準拠したウィジェット・プラットフォームに移ってくるように働きかけていきたい。

ACCESSのウィジェット・プラットフォームは,日本国内ではソフトバンクモバイルとウィルコムが採用している。NTTドコモとKDDIに対して働きかけることはないのか。

 NTTドコモのウィジェットである「iウィジェット」の実態は,DoJaをベースにしたJAVAアプリだ。正直,開発者としてはJAVAでウィジェットを書くのは敷居が高いと感じている。今回ウィジェットの標準も見えてきたので,OMTP BONDI仕様のウィジェットも透過的に扱えるような仕組みが入るとよいのではと感じている。なおNTTドコモのWindows Mobile端末上では,我々のNetFront Widgetを利用できる環境にある。

 KDDIのウィジェットはOperaのエンジンを利用している。こちらはかなり独自な実装であり,このままOMTP BONDI仕様をサポートするのは,すぐには難しいと我々は考えている。標準仕様に沿ったほうが携帯電話事業者にとってもメリットが大きい。ACCESSとしてもKDDIに対して,OMTP BONDI仕様のウィジェットに移ってくるように働きかけをしていきたい。

今後のACCESSとしてのビジネスの方向性は。

 これまでは携帯端末の組み込み系クライアント・ソフトウエアが収入の軸になっていたが,長期的に見るとその部分だけで食べていくのは,競争も激しくなっているので,厳しくなると見ている。そこでACCESSとしては,ユーザーに直接サービスを提供するような分野に近付いていきたい。2008年には,我々自身がサービスを提供するメディアサービス事業部という部署を立ち上げている。

 一つの方向性は携帯の画面への広告ビジネスだ。これまでACCESSでは,NetFrontというブラウザを通して,携帯の画面へアプローチしてきた。しかし残念ながらブラウザは表示の道具でしかなく,我々はそこに表示するコンテンツには関与できなかった。

 しかしウィジェットは我々自身がアプリケーションを提供することも可能で,そこで広告やアフィリエート・ビジネスが展開できる。やっと我々のようなプレーヤが関与しやすいインフラが整ってきたと考えている。ウィジェットという枠組みを生かして,我々のテクノロジーをベースにしたアプリケーションの配布し,携帯の小さい画面の陣地争いで存在感を出せる方向を目指していきたい。