携帯機器向けの組み込みソフトウエア・ベンダー大手のACCESS。Linuxベースのモバイル機器向け統合ソフトウエア「ACCESS Linux Platform」(ALP)や,ウィジェット・プラットフォームである「NetFront Widget」を通して,新たな展開も見せ始めている。同社の最高技術責任者に就任した石黒邦宏常務執行役員 兼 最高技術責任者 兼 最高情報責任者 IP Infusion CTOに,ACCESSの最新の取り組みや今後のビジネス展開について聞いた。
ACCESSが取り組んでいることの最新状況を教えてほしい。
Mobile World Congress 2009に合わせて,ACCESSが開発するLinuxベースのモバイル機器向け統合ソフトウエア「ACCESS Linux Platform」(ALP)のバージョン3をリリースした。一番大きな特徴は,大手携帯電話事業者やメーカーが参加する端末プラットフォームの推進団体である「LiMo Fountation」のリリース1タイプ2に対応した点だ。同時にLiMoに対してACCESSからソースコードを提供し,LiMoの参照プラットフォームとして採用された。
最近になってLiMoには携帯電話事業者が集結しつつある。米グーグルのAndroidやSymbianなどライセンス・フリーな端末プラットフォームが増えているが,Androidならグーグル,Symbianならノキアといった特定のプレーヤに近いプラットフォームしかない。
そのようなプラットフォーム上では,携帯電話事業者自らのサービスを作りにくい場合がある。そこで特定のベンダーの色に染まっていないオープンなプラットフォームであるLiMoに,携帯電話事業者からの注目が集まっているのではないか。中でもACCESSは,LiMoに参加する企業の中で唯一,端末ベンダーではない立場で実装を出している会社だ。この立場を生かして,今後ビジネスを展開していきたい。
Mobile World Congressでは,ノキアやマイクロソフトがアプリケーションのマーケット・プレイスを発表して注目を集めた。LiMoのプラットフォーム上でも同じように,サード・パーティ製のアプリケーションを配布するようなビジネスを考えているのか。
LiMo上でサード・パーティが作ったアプリケーションを簡単にインストールできるようになるには,残念ながらまだ時間がかかると見ている。
特に日本の携帯電話事業者は,サード・パーティ製のネイティブ・アプリケーションはセキュリティのリスクが大きいと考えている。携帯電話はもはやライフ・ラインになっているため,そこにウィルスに感染したアプリケーションが入り,システムを壊すことがあってはならない。
LiMoフレームワークの中で,セキュリティ・ガイドラインも提案されているが,メンバー全員が完全に合意するまではなっていない。まだ時間がかかるのではないか。
その間,我々はウィジェットに力を入れたいと考えている。最初,ウィジェットが始まったときは,デスクトップ上にショートカットを作るようなブックマークの簡易版的な位置付けだった。しかし今ではAjaxに対応するなど,アプリケーション・プラットフォームとしての存在に変わりつつある。
携帯端末だけでなく,デジタルテレビやパソコン,カーナビ,MID(mobile internet device)など,ありとあらゆるデバイスに,クロス・プラットフォームでウィジェットを展開していきたいと考えている。