2009年2月20日、NTTドコモから新端末「BlackBerry Bold」が発売された。BlackBerryは、1999年に北米で発売されたスマートフォンの草分け的な存在だ。全世界での利用者数は約2100万人にも及ぶ(2008年11月末現在)。日本国内では2006年にNTTドコモが「BlackBerry 8707H」を法人向けに発売、2008年8月には、個人向けにも販路を広げた。Boldの投入に向けて、ドコモでは2月からは料金メニューも大幅に見直し、販売拡大に意欲を見せている。新端末の特徴や日本市場への評価などを開発元の加リサーチ・イン・モーション(RIM)でブラックベリー事業を統括するドナルド・モリソンCOOに聞いた。


北米地域で販売しているBlackBerry端末は実に多様だ。その中で、日本市場向けにBoldを選んだ理由は。また、スマートフォンの市場として日本をどう評価しているか。

加リサーチ・イン・モーションCOOのドナルド・モリソン氏(写真:新関 雅士)
加リサーチ・イン・モーションCOOのドナルド・モリソン氏(写真:新関 雅士)
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ドナルド・モリソン(以下、モリソン) 日本市場は非常に洗練されたマーケットだ。インフラの面で言えば、3Gネットワークは世界中のどの国よりも広範囲に整備されている。また、携帯端末でネットにつないで情報を得るという行動に対してもユーザーは十分慣れ親しんでいる。

 Boldを日本市場向けに選んだのは、BlackBerryのラインアップの中でフル機能を備える最上位機種だからだ。3Gへの対応に加えて、Wi-Fi、Bluetoohにも対応している。ドコモとの市場調査でも、Boldのような端末に対する潜在需要はあるだろうという結論だった。

 現に、Boldの発売開始を控えた2月上旬には8707hの販売は伸び悩んでいた。世界的には顧客ベースで45%は「プロシューマー(個人契約でのビジネス利用)」だ。日本市場はBoldの登場を待っていたと思う。

BlackBerryが登場して10年になる。端末はさまざまな形に進化したが、その中で変わらないものとは何か。

モリソン BlackBerryのコンセプトは「プッシュテクノロジー」に基づくという点。端末側が情報を取りに行っているわけではない。この特徴はRIMが独自に「BlackBerryネットワークサービス」というインフラを持っているから実現している。

 10年前のサービス開始時は、BlackBerryネットワークと接続されていたのはカナダ、米国の携帯電話事業者2社ずつだったが、現在は150カ国425社とつながっている。

 もう1つの特性は、高度なセキュリティだ。端末の設計はフルセキュアであることを念頭に行われている。セキュリティに対する評価の高さは、政府や警察といった公的機関でもBlackBerryが利用されているという事実が示していると言える。

BlackBerry対応アプリケーションを開発するエンジニアたちの支援については。

モリソン もちろん行っていく。アプリケーション・プロバイダー向けのアライアンスを用意する。

 これまで、BlackBerryは電子メールを中心としたコミュニケーションプラットフォームと位置付けてきた。一方で、若者は異なるコミュニケーションを好む傾向がある。例えば、私の22歳の息子などはインスタントメッセージを頻繁にやりとりする方が中心。また、BlackBerryから「Facebook」や「My Space」を利用できるアプリケーションを提供したところ、記録的なダウンロード数だった。すでに100以上のアプリケーションがBlackBerry向けには提供されている。

iPhoneやAndroid搭載端末など、新しい携帯端末が登場しているBlackBerryの市場に与える影響はどう考えるか。

モリソン 成熟市場なら影響があるかもしれないが、スマートフォン市場はまだまだ成長する市場だ。競合については特に心配していない。ドコモと我々自身の戦略に注力していく。