ニューズ・ツー・ユー取締役の平田大治氏
ニューズ・ツー・ユー取締役の平田大治氏
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 ネットの普及による情報量の爆発的増加、メディア接触状況や情報収集方法の多様化などにより、マス広告だけでブランディング、売り上げ拡大を達成することはますます困難になっている。その中、広告・宣伝、マーケティング担当者の間では、PRに対する注目度が高まっている。そこで、ネットPRを中核事業とするニューズ・ツー・ユー取締役で、「マーケティングとPRの実践ネット戦略」(デビッド・マーマン・スコット著、日経BP社発行)の翻訳者を務めた平田大治氏に、マーケティング、PRを取り巻く環境の変化を聞いた。
(聞き手は、杉本 昭彦=日経ネットマーケティング

「マーケティングとPRの実践ネット戦略」では、マーケティングとPRには古いルール、新しいルールがあるとしている。その違いは。

 古いルールとは、メディアが専業しかない時代のこと。プレスリリースを書いて、メディアにどう情報提供すれば、一般の人に伝わるかを考えていた。インダイレクトなコミュニケーションを念頭に置いて戦略を考える必要があった。そのため、リリースの冒頭には「報道関係者各位」と書いてあった。

 今の新しいルールは、「報道関係者各位」とあってもリリースはみんな読んでいるのが前提。みんなというのはネットを利用する人たち。普及率を考えればあらゆる人が読めると言っていい。それを前提にPRやマーケティングの戦略を考える人は、明らかに有利な立場でビジネスができている。

その背景はネットの普及か。

 一つはネットの普及による(企業と顧客の)直接的なコミュニケーションの実現だ。今までもダイレクトマーケティングはあったが、多くの人に情報を伝えるためには(郵送など)大きなコストがかかった。ネットではローコストでダイレクトマーケティングができる。マーケティングの世界ではダイレクトなコミュニケーションにかかる費用は大幅に下がったし、PRの世界にとっては全く新しい考えとなる。

どう取り組めば効果的なPR、マーケティングが可能になるのか。

 一番重要なのは、リリースなど企業が発信する情報をいろいろな人が読むことになるので、想定する読み手の幅を広げる必要があることだ。例えば、企業は自社の知識があるので詳しく書こうと考えるし、業界用語や略語を使ってしまいがちだ。しかし、Webサイトに来る人の中には、初めて来る知識のない人もいるかもしれない。今までは、間に入る広告代理店や、メディアがそういう人向けに言葉を言い換えることで、お客さんが理解していた。お客さんと同じ視点、お客さんが使う言葉を使ってコミュニケーションすべきだ。

 もう一つは、ネットを使うマーケティング、PRでは、「ある人には情報A」「別の人には情報B」のように人によって情報差別するのは危険な行為になる。ブログでの情報発信でも同じだが、公平性、透明性が求められる。うそをついてはいけない。

 情報をきちんと出す人に、信頼が集まるというのも鍵になる。今の人はさまざまな情報を調べて商品を買う。昔は情報自体が少なかったので、企業が消費者、購買担当者に情報を届けた時点で“勝利”だった。今は情報も多く、選択に悩むほどだ。消費者も購買担当者も、三つぐらいだったら比較検討するけど、10個もあると情報を集めることさえいやになる。

 そんな環境の中では、正しい商品選択のプロセスのような公平で客観的な情報まで提供することなどで信頼を得て、最終的には自分のところで買ってもらうことが求められる。