写真 ITRの広川取締役
写真 ITRの広川取締役
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アイ・ティ・アール(ITR)は2008年秋からITコスト削減の支援サービスを提供している。日本企業のシステム部門はここ数年間コストを削減してきており、売上高に占める割合や絶対額も相当圧縮している。これ以上削減する余地は残されているのか、あるとすればどのように取り組めばいいのか。サービスの責任者である広川取締役に聞いた。(聞き手は市嶋 洋平=日経コンピュータ)

 日本企業はこれまでITコストの削減に取り組んできた。これ以上の削減余地はないのではないか。また戦略投資まで一律にカットする傾向を強めはしないか。

 だからこそ今回の支援サービスには不要なコストを落として、戦略投資を削減しないでもらいたいという思いがある。

 例えば、ある企業では年間のシステム運用・保守にかかるコストを1割以上削減し、年間1億円のコストを抑えることができた。売上高利益率が5%の企業を考えてみよう。この1億円は、20億円分のビジネスに相当するもの。売上高を伸ばすのが厳しいご時世で、極めて大きな効果と言える。

 見直しの結果、自社もしくはシステム子会社による「内製化」でこなせるものもある。そうすれば自社のグループ外に流出する現金を減らせる。

どこから手をつければいいのかわからない、というシステム部門の声が少なくない。

 ユーザー側の協力が得られないと、見直しも中途半端で終わってしまう。まずはユーザー企業内での体制作りが重要だと考えている。特に二つ点に留意し、社内で正式なプロジェクトを組んでいただきたい。

 一つが、システム部門以外に経理のスタッフを入れること。契約書に書かれた数字をきちんと理解する上で、経理の正しい知識が欠かせない。できれば、経理部門のスタッフがシステム部門のオフィスに常駐してもらい、一緒に働く環境を作っていただきたい。もう一つがプロジェクトを経営からトップダウンで立ち上げたものとして位置付けること。見直しの聖域ができないようにするためだ。

 その後、ITの提供会社との契約内容を棚卸しすることをおすすめしたい。なかでもシステムの運用・保守から取り組むことを推薦している。運用・保守はシステムをカットオーバーしてから廃棄まで、毎月のようにかかるコスト。その契約が毎年などでの自動更新となっているケースが少なくない。ユーザーが見直しを要求しなければ、すすんで料金を下げることはない。

運用・保守サービスはシステムの安定性を保つ上で極めて重要だ。そこをカットすることがシステム障害に結びついたりはしないか。

 あくまでもムダであったり過剰なサービスを見直すという考えだ。

 例えば当初は2人月で契約していても、新しい技術の導入や担当スタッフの習熟、初期トラブルの収束によって、半分の1人月でこなせられるようになっていることがある。実際に1人月しか割り当てていない場合もある。

 こうした見直しの余地があるサービスを洗い出し、それを自社の現場担当者に確認するのだ。そしてITベンダーに質問と改善提案を出していく。悪質かつまれなケースだが、契約明細には入っているが、実際にはサービスを提供していないことがあった。

 この機会にサービス品質の見直しも検討したい。さほど重要でないシステムまで基幹系と一緒に、24時間365日の運用・保守を契約していないだろうか。システム開発で多忙を極める段階において、運用面で不利な契約を結んでしまっていることが少なくない。

見直しはどの程度の期間で可能か。企業のシステム部門は早期の効果を期待されている。また費用について教えてほしい。

 およそ3カ月で一つの案件をこなせる。3カ月の場合で300万円程度から引き受けている。景気減速から後退が鮮明になり、顧客である企業のシステム部門からITコストの削減について、全国の企業から相談が増えている。

 もちろん企業によっては多くのサービス提供会社と付き合っており、その契約は膨大な量だ。その場合、取引額の大きな上位10社というように絞って始めたらいい。そこまでは当社など外部の会社と取り組んで、11社めからは自社で進めていくのもいいだろう。