ヴーヴ・クリコ ジャパン コミュニケーションマネージャー 西野道代氏

 1772年創業のフランスのシャンパンブランド「ヴーヴ・クリコ」。日本では2000年にルイ・ヴィトンジャパンより独立して発足したヴーヴ・クリコ ジャパンが販売、プロモーション活動を展開している。同社は2008年12月1日より同社初となるWebプロモーションを開始。クリスマスやイブの当日だけでなく、クリスマスを待つ約4週間の期間を楽しむキャンペーンサイト「Advent Style」を開設した。同プロモーションの狙いについてヴーヴ・クリコ ジャパンでコミュニケーションマネージャーを務める西野道代氏に話を聞いた。
(聞き手は、原 隆=日経ネットマーケティング

今回、Webプロモーションを手掛けたきっかけは。

 より深いコミュニケーションをとれると考えたからだ。ヴーヴ・クリコ ジャパンはこれまで、一般誌やファッション誌といった雑誌でのタイアップ広告を中心に消費者とコミュニケーションを図ってきた。「商品自体の訴求」「ヴーヴ・クリコというブランドイメージや世界観の訴求」といった大きく二つの方向性を持って時期やタイミングを見て展開してきた。

 しかし、限られた予算のなかで、この両方を一緒に訴求するのは非常に難しい。数ページで数百万円規模のタイアップ広告を何十ページも展開するのは現実的ではないからだ。ただ、本音を言えば商品、ブランド訴求の両方を一緒に実現したい。自社が展開するWebプロモーションであれば、この両方を訴求することも十分可能なのではと考えた。

左:ヴーヴ・クリコ ジャパンが12月1日に開設したプロモーションサイト「Advent Style」、右:ヴーヴ・クリコ ジャパンがキャンペーンで配布したブログパーツ

Webプロモーションを過去に手掛けた手掛けた例は。

 今回が当社にとって初めての試み。本社でもネットを活用した同様のプロモーションはあまりやっていない。商品戦略についてはある程度本国の意向に従うというガイドラインがあるが、親会社に当たるLVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトンは非常にローカル事情に寛容。一定のプロセスを経る必要はあるものの、柔軟な戦略を立てやすい。

成果の指標として何に注目しているか。

 売り上げへの貢献については今回指標にしていない。どれだけ多くの消費者と深いコミュニケーションを図れるか、これが最大の目的だ。Advent StyleはほぼすべてFlashで作っているためページビューは指標にならない。そのため、ユニークユーザー数および滞在時間を指標にしている。ユニークユーザーについてはまだ非公開だが、滞在時間は平均2分。通常のプロモーションサイトと比べると相当長いと聞いている。

 また今回のキャンペーンは予算が限られていることもあり、いわゆる広告宣伝費はかけていない。できるだけPRの力で広げてみようと考えた。サイトの更新は2008年12月24日をもって終了し、閲覧も2009年1月31日で終了する。期間が短いため、ニュース系Webサイトでどのくらい取り組みが紹介されたかも指標の一つ。12月1日のサイト開設日に約15のニュースサイトに掲載してもらうなど、一定の手応えを感じている。

今回の取り組みで一定の成果が上がった場合、プロモーションコストのメディア配分を変える予定は。

 雑誌は雑誌の良さがあるし、完全にネットにシフトすることはないと思う。ラグジュアリーブランドとして雑誌はどうしても重要なメディアだからだ。ただ、ネットでのプロモーションは当社にとって新しい領域であることは確か。ある程度の確信が持てるようになったときには、ネットでのプロモーションの予算配分を増やすことも十分に考えられる。

 ケータイサイトも具体的な検討はしていないものの、チャレンジしてみたい領域。今回のプロモーションサイトもケータイから閲覧することもできたが、対応しなかった。今思えばやればよかったかなと思っている。

不況がシャンパン市場に与える影響は。

 フランスにおけるシャンパン全体の出荷量は前年比でマイナス。日本も前年比2%減だ。ただ、米国の17%減と比べるとそこまでの落ち込みではない。

 ただ、今年のクリスマスについては消費者の動き出しが非常に遅い。クリスマスムードの盛り上がりが1~2週間遅いイメージだ。シャンパンを含め、ラグジュアリーブランド全体が非常に厳しい状況に置かれている。ただ、高級ホテルからの予約もどんどん入ってきているし、出るところはきちんと出ている。二極化が進んでいる印象を受ける。

ヴーヴ・クリコ ジャパンはWebプロモーションに合わせリアル店舗ともタイアップ。新丸の内ビル1Fの「PG Cafe Paris」では12月12日より31日までの期間、ヴーヴ・クリコのブランドカラー「クリコ・イエロー」でライトアップされている