ソフトバンクBBは,ADSLサービス「Yahoo! BB」に2段階の定額制を採り入れたメニュー「Yahoo! BB ホワイトプラン」の提供を2008年12月1日に開始した(関連記事)。ソフトバンク3Gの携帯電話とのセット利用でYahoo! BB ホワイトプランの基本料を無料にする「ソフトバンクケータイセット割引」を提供することで,ユーザーの囲い込みを強化する。同社コンシューマ事業推進本部 本部長を務める馬場一氏に,提供の狙いや想定するユーザー層などを聞いた。

(聞き手は榊原 康=日経コミュニケーション


写真●ソフトバンクBB コンシューマ事業推進本部本部長の馬場一氏
写真●ソフトバンクBB コンシューマ事業推進本部本部長の馬場一氏

Yahoo! BB ホワイトプランを導入した狙いは。

 量販店でYahoo! BBを販売していると,ゲーム機などパソコン以外の用途で確実に需要があることが分かってきた。ただ,ゲーム機のためだけに毎月数千円を払うのは高過ぎる。手軽に安く利用できるサービスが求められていると考えた。そこでデータ通信量が少ないときは安く,多いときは相応の料金を払ってもらう2段階の定額制を導入することにした。

 こうしたニーズはゲーム機だけにとどまらない。意外に思うかもしれないが,ADSLを解約したユーザーに理由を聞くと,「インターネットは不要です」というものが少なからずある。解約理由のベスト5には必ず入っている。この理由を詳しく調べてみると,インターネットが本当に不要なわけではない。「平日の昼間は会社や学校でインターネットにアクセスできる。夜間と土日だけのために毎月数千円も払うのはもったいない」というのだ。

 最近は携帯電話も進化している。iPhoneをはじめとしたインターネット・マシンの登場で,日常のメールやWeb閲覧であれば移動中に済ますことができる。この点でも,自宅のブロードバンドに毎月数千円を払うのはもったいないと考えるユーザーが増えている。

Yahoo! BBの契約数は2007年3月末に516万件あったが,2008年3月末が480万9000件,2008年9月末が455万1000件と減少が続いている。Yahoo! BB ホワイトプランでどの程度の契約数を見込んでいるのか。

 目標数値は非公開だが,Yahoo! BBを早く純増基調に戻したい。まずはこれが目標。Yahoo! BBの販売経路はこれまで家電量販店やWebサイト,アウトバウンド(電話)が中心だったが,Yahoo! BB ホワイトプランはソフトバンクショップにも積極的に展開していく(編注:以前から一部で取り扱っていたが,あまり力を入れていなかった)。ソフトバンクショップには新規契約や機種変更などで多くのユーザーが来店する。こうしたユーザーにアプローチしていきたい。

 これはソフトバンクショップの支援にもつながる。携帯電話の販売店は販売台数の落ち込みで収入が減少している。この状況を打開するには販売台数をなんとか増やすか,取り扱い商品を広げるしかない。Yahoo! BB ホワイトプランであれば携帯電話と親和性が高く,「ソフトバンク3Gのホワイトプランに加入しているならブロードバンドも安く使えるようにしませんか」といった具合に販売しやすくなる。

データ通信量が多いユーザーは現行プランよりも割高になる。ソフトバンクケータイセット割引を適用しても,通信量が天井付近に到達すればやはり割高となる。

 確かにインターネットの利用頻度が高いユーザーは現行プランを契約した方が安い。先ほど説明したように,基本的にはインターネットの利用頻度が低いユーザー向けだ。ただ,ソフトバンクケータイセット割引の場合は,iPhone 3GやSoftbank Xシリーズ,Nokia N82などの無線LAN対応機種を契約していれば「Yahoo! BB 無線LANパック(レンタル)」の料金(月額1039円)も無料となる。無線LANパックを現在利用しているユーザーで,かつソフトバンクケータイセット割引を適用した場合は,通信量が上限に達しても常に安くなる。

基本料に含まれる無料通信分(50Mバイト)の算出根拠は。

 当社の基準で算出した。メールやWebをほとんど使わないユーザーや,インターネット利用を会社や学校,携帯電話と賢く使い分けるユーザーの通信量はおおむねこの程度と考えている。ただ,50Mバイトと言っても分かりにくいので,パンフレットに目安を示している。Yahoo!メールであればA4サイズ×1ページの分量で約250回の送受信,Yahoo! Japanトップページの表示であれば約100回,Yahoo!動画の視聴であれば約20分(ビットレートが300kビット/秒のコンテンツの場合)といった具合だ。こうした目安を説明できる販売員の教育にも力を入れていく。

従量部分のデータ通信量はどのように算出するのか。

 データ通信量は上りと下りの両方を対象としている。それぞれの通信量を独自の仕組みで計測し,上りと下りのうち多い方を採用する。トラフィックには(DoS攻撃のように)ユーザーが意図せずに発生するものもあるが,原則として課金対象としている。このため,契約時にはユーザーに必ず説明し,了解を得るようにしている。なお,BBフォンで生じるトラフィックに関しては通話料を徴収しているので従量課金の対象外となる。

Yahoo! BB ホワイトプランの導入による収益への影響は。

 2008年9月から宮城県や福島県,新潟県で試験提供(愛知や京都,岡山,沖縄の一部でも実施)した印象では,ARPU(1契約当たりの月間平均収入)が極端に下がることはないと見ている。ただ,ARPUが全体的に下がる可能性は十分あり,付加価値サービスを提案したり,新規契約を増やしていくことでカバーしていきたい。また仮にARPUが下がったとしても,Yahoo! BB ホワイトプランから2年の最短利用期間を設定したのでユーザーの引き止め効果を期待できる(これまでは一部を除いて最短利用期間を設定していなかった)。

ソフトバンク3Gの携帯電話とYahoo! BBのIP電話サービス「BBフォン」との間の通話を無料にするサービス「ホワイトコール24」も2008年6月に投入した(関連記事)。こちらの利用状況は。

 ホワイトコール24の契約数は開示していない。ただ,ソフトバンクモバイルのホワイトプラン(ホワイトコール24の契約にはホワイトプランの利用が前提)とYahoo! BBの両方を契約しているユーザーはおおむね加入している。当社としてはBBフォンとの通話が24時間無料になるのだから,ソフトバンク3Gのユーザーは全員Yahoo! BBを契約してもおかしくないとまで考えている。しかし,Yahoo! BBのユーザーのうちホワイトコール24に魅力を感じて契約したユーザーは15%程度。この数字は,まだまだと見ている。ホワイトプランとホワイトコール24を契機にYahoo! BBをどんどん伸ばしていきたい。

FTTHの展開はどのような状況か。

 集合住宅向けは,ユーザーを効率良く獲得できる場合に限り手がけている。FTTH専門の営業部隊もあり,契約数は少しずつ伸びている。一方,戸建て向けは現行の制度と接続料水準では厳しい。特定のエリア内である程度まとまったユーザーを獲得できなければ採算に乗らない。FTTR(fiber to the remote terminal)も一部エリアで試験的に提供しているが,厳しい状況だ。今はADSLを中心に頑張っていく方針だ。

編集部注:「ソフトバンクとNTT東西が『フレッツ光』の代理販売で提携交渉」とする一部報道が2008年12月4日にありましたが,本記事は上記報道の前に取材したものです。ソフトバンクならびにNTT東日本は12月12日現在,この報道について「ノーコメント」としています。