米国の大手自動車メーカー三社の本社を擁するミシガン州。州知事のグランホルム(Jennifer Granholm)氏は省エネに熱心なことでも知られており、同州のIT部門はクライメート・セイバーズ・コンピューティング・イニシアチブ(米国でGoogleとIntelが中心となって設立した非営利団体。コンピューターの消費電力50%削減などの目標を掲げる)にも参加している。ミシガン州のIT部門の取り組みについて、州CIOのケン・タイス(Ken Theis)氏に話を聞いた。

ミシガン州CIOのケン・タイス氏
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ミシガン州が省エネに熱心な理由は何か。

タイス氏 グリーン化が問題になり始めたのは、1年半から2年前のことです。ミシガン州では、環境・エネルギー危機を経済から切り離すことはできません。(筆者注:ミシガン州では自動車産業が衰退し、再生可能エネルギーやバイオテク等の新産業に活路を見出そうとしている)。この2つの争点がぶつかり合う結果、グリーン化は待ったなしの懸案となっており、CIOとしても無視できない問題になってきているわけです。

具体的な取り組みを紹介してほしい。

タイス氏 「リビルド・ミシガン」というプロジェクトでは、州内の公立学校、大学、自治体の施設のグリーン化を援助している。また、バイオマスエネルギー促進のために各種のプロジェクトが立ち上げられている。

 州政府内の取り組みとしては、例えばミシガン州職員5万5000人を対象とした電子メール・システムの無駄を改善した。かつては70種類ものシステム存在し700台のサーバーが稼働しているという複雑で無駄が多い状態だった。現在では2、3カ所のデータセンターに集約してサーバーも10分の1の70台に集約した。州のシステム全体では、31カ所のデータ―センターを引き払って、いくつかに集約している。そのほか、全部で1万2000台あったファックス、コピー、スキャナー等のOA機器を複合機に取り替えて、3分の1の4000台に削減した。

 こうした努力のおかげで、州機関による電力消費を18%(金額ベースでは1年間で2100万ドルの節約)削減した。IT経費全体としては、州機関のIT施設等の統合によりの24%カットを実現した(金額ベースでは年間1億ドル。人件費等すべて含む)。

これから力を入れる取り組みは?

タイス氏 シンクライアントのシステムへの移行がトレンドになるだろう。ソフトウエアをサーバーサイドに置き、ほとんどの処理をそこで行うので、電力消費の効率化が可能になります。ミシガン州でも導入を検討する可能性があります。

省エネ運動は州レベルに限られるものですか。

タイス氏 ミシガン州では州レベルのインフラを市町村と共有する方向で動いています。例えば、州、カウンティー(郡)、市、他の自治体、それに大学などが共同で使えるデータセンターの運営を目指しています。それは民間との協働という形をとります。官民ともにIT運営のためにデータセンターが必要なわけです。そこで民間がデータセンターを建設し、州政府がテナントとなってその運営に当たり、他の自治体や民間企業にもサービスを提供するという構想です。これが実現すれば、電力を大幅に節約できます。

 これからのチャンスはこのような協働にあります。州レベルの統合モデルを他の自治体を巻き込んでどのように拡大するかです。データセンター、ネットワーク、アプリケーション等の統合の可能性に興味を持つ郡などから問い合わせが頻繁にあります。

 要するに、ITのグリーン化を追求すれば、伝統的な行政の区分けが崩れることにもつながるわけです。 

ミシガン州CIO
ケン・タイス(Ken Theis)
2008年1月より現職。自動車メーカーGMに10年間勤務した後、9年前に州政府に勤務。前ミシガン州CIOテリー・タカイ(現カリフォルニア州CIO)の右腕として、IT組織の統合などに功績。

聞き手:石川幸憲=在米ジャーナリスト(2008年9月に米国ミルウォーキー市で開催されたのNASCIO〔全米州CIO協会〕年次総会会場にて取材)