米VMwareは,サーバー仮想化ソフトを中核に,データセンター全体を効率よく運用するための運用管理ソフト群を提供するベンダーである。日本法人が開催した同社セミナーに合わせて来日した,マーケティング担当VicePresidentであるKarthik R.Rau氏に,直近のビジネスや製品の状況について聞いた。

(聞き手は日川 佳三=ITpro


米VMwareでVice President of Marketingを務めるKarthik R.Rau氏
米VMwareでVice President of Marketingを務めるKarthik R.Rau氏
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直近のビジネス状況を教えてほしい。

 米VMwareの仮想化製品群は,デスクトップからデータセンターまで広い範囲をカバーしている。現在,VMwareユーザーは世界で12万社,日本だけで5000社に達する。ユーザー層は中小企業から大企業まで幅広く,業種も多岐に渡る。2008年第3四半期の売上高は4億7200万ドルであり,前年同期比で32%成長した。

 2008年現在,VMwareの製品数は,20を超える。VMwareに対しては仮想化ソフトを提供する単なる“ハイパーバイザ企業”だとする誤解をよく受けるのだが,これは大きな間違いだ。仮想化技術によって情報システムを効果的に利用するための,各種の運用管理ソフトを提供している企業なのだ。実際,サーバー仮想化ソフトであるESXのバージョン・アップは緩やかだが,運用管理ソフトは矢継ぎ早に新製品を投入している。

 現在フォーカスしているコンセプトは,仮想化技術の適用分野などに応じて,大きく3つある。(1)1つ目のコンセプト「vCenter」は,ユーザー企業の社内データセンターを表現する。(2)2つ目の「vCloud」は,第三者が提供するデータセンターを活用した,データセンター同士の相互連携のこと。(3)3番目の「vClient」は,デスクトップ環境を表現する。

ソフトウエア製品群の最新動向を知りたい。

 (1)vCenter,つまり社内データセンターを構築するために必要なソフトウエア製品群は,そのほとんどをすでに提供済み。例えば,ハイパーバイザのようなプラットフォーム・ソフト,さらに,プラットフォームの可用性と性能を確保するソフト,各種運用管理ソフト,他のデータセンターと連携するためのソフト,などである。

 2009年には,運用管理向けに4つの新製品を投入する。性能管理の「vCenter AppSpeed」,設定管理の「同ConfigControl」,ジョブ・ワークフロー管理の「同Orchestrator」,キャパシティ分析の「同CapacityIQ」,課金管理の「同Chargeback」である。

 すでに提供済みの製品の中では,日本でも2008年12月に提供を開始する「Site Recovery Manager」(SRM)が,一押しの製品だ。遠隔地のデータセンターを用いて,VMware仮想サーバーの災害復旧を実現する運用管理ソフトである。ストレージ・ベンダー各社と協調し,ストレージが備える遠隔コピー機能と連携する。このSRMは,日本市場では特に注目を集める製品だろう。

第三者のデータセンターを活用するvCloudの取り組みとは何か。

 vCloudイニシアティブと呼ぶ,サービス提供プロバイダ100社などによる協業団体を発足した。同団体では,仮想化プラットフォームを利用するための定義書式やAPIなどを標準化するなど,データセンター環境の標準化に取り組んでいる。これにより,ユーザー企業は業務アプリケーションや仮想サーバーを動作させるプラットフォームとして,任意のデータセンターを自由に選べるようになる。

 vCloudの取り組みによって,情報システムをデータセンター間で移動させる運用が可能になる。インター・クラウド(社内データセンター)からサード・パーティが提供するクラウドへと,情報システムのリソースの一部または全体を移動するというものだ。システム負荷が高まった時にサード・パーティのクラウドへと負荷をオフロードしたり,災害対策(ディザスタ・リカバリ)用にサード・パーティが用意する遠隔地のクラウド上に復旧させる,といった具合だ。

デスクトップなどユーザー・インタフェースまわりでの最新動向は何か。

 エンドユーザーが求めていることはシンプルだ。どこにいても,どのデバイスからも,自分のデスクトップ環境やアプリケーション環境を利用できる,というものだ。このための製品を,各種用意している。

 仮想マシンの画面を画面情報端末プロトコルで転送するVDIの使い方のほか,アプリケーションをポータブル化してインストール不要にする使い方など,各種の使い方をカバーする。もちろん,クライアントPC上で仮想マシン・イメージを実行させる使い方も可能になる。

 直近の話題には,2008年10月に買収したばかりの仏TRANGO Virtual ProcessorsがARMプロセッサ搭載携帯デバイス向けに開発した仮想マシン環境がある。携帯デバイスに仮想マシンを適用することで,例えば,音声アプリケーションとPIM(個人情報管理)アプリケーションを分離独立させて実行可能になる。ウイルス感染などPIMアプリケーションに生じた不具合が音声アプリケーションに影響を及ぼさないようにできる。