米Googleが企業向けに提供するメールやオフィス・ソフト,グループウエアやビデオ共有などのサービスであるGoogle Apps。そのサービスはどのような方向に進化しようとしているのか。OpenOffice.orgとの連携は,Microsoft Officeとの互換性は。Google エンタープライズ部門製品企画担当ディレクター マシュー・グロツバック (Matthew Glotzbach)氏に聞いた。(聞き手は,高橋 信頼=ITpro)


Google Appsが目指しているのはデスクトップ・アプリケーションをWeb上で再現することではないように見える。何を目指しているのか。

Google エンタープライズ部門製品企画担当ディレクター マシューグロツバック氏
Google エンタープライズ部門
製品企画担当ディレクター
マシュー・グロツバック氏
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 Google Appsのフィロソフィー(哲学)は,ユーザーをエンパワーメントすることであり,ユーザーが情報を共有すること,チームで共同作業を容易にできることに力点を置いている。

 これまでのエンタープライズ・ソフトウエアは,IT中心であり,企業中心だった。Google Appsが志向しているのはユーザー中心のあり方だ。

 例えばGmailはメールに検索機能を付与することから始まった。メールを捨てなくてもよく,いつでも欲しいメールを見つけることができる。これはユーザー中心のひとつの現れだ。

 今までのオフィス・ソフトウエアの命題は「オフラインのデータをどうデジタル化するか」だった。例えば企業の戸棚にある事務書類をデータ化することなどだ。

 Google Docsのテーマは異なる。今まで個々のマシンに孤立していたデータを,インターネット上のクラウドの中で多くの人たちと共有し,協力しあいながらどう使っていくか,がテーマだ。

 例えばGoogle Docsではネットワークの上で,いろんな人たちと文書やスプレッド・シートを共有しリアルタイムで共同作業できる。従来とは全く違った取り組みだ。

 またGoogle SpreadSheetのGooglelookupという関数を使えば検索結果からデータを表に埋め込める。「=GoogleLookup("Japan"; "population")」とセルに書き込めば日本の人口が,検索結果による最新のデータが表示される。国であれば首都やGDPも取得できるし,野球選手の打率やミュージシャンの誕生日も取得できる。

インターネットに接続していないオフライン環境での利用は,どの程度重視しているのか。

 オフラインでの利用は重要だ。日々その必要性は少なくなってはいるが,インターネットに接続できない場所やシチュエーションは今も存在する。

 Google Docsは2008年春からインターネットに接続していなくともオフラインで利用できるようになった(編注:日本語版Google Docsでは未対応だが,英語版で日本語ドキュメントも編集できる。関連記事「Google GearsをGoogle Docsで試す」)。私も日本への飛行機の中でGoogle Docsをオフラインで使い,プレゼンテーション資料を作った。