
約9年にわたって、ASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)やSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)の普及促進に取り組んできた。システムを自前で持つ必要のない時代が到来したとして、今後さらにASPやSaaSが普及していくとの信念を持つ。フロントオフィスから利用が進むことで、国内の企業もデータを外部に預けることへの不安が解消していくという。
ASP・SaaSインダストリ・コンソーシアム(ASPIC)が誕生して約9年が経過しました。
最初は、ISP(インターネット接続事業者)の次はASPだという流れでできたんです。ITバブルが崩壊して会員数が減ったのですが、最近はまた盛り返してきました。現在の会員数は184社です。
ブロードバンド環境が整備されたのが大きいですね。Webサービスから始まって、マッシュアップなどのWeb関連技術が進化しことも効果がありました。
現在、日本で何社くらいがASPやSaaSを手掛けているのでしょうか。
正確な実態はつかんでないのですが、1000社から2000社はいるのではないですか。1社で複数を手掛ける場合がありますから、サービスの数はもっと多くて、2000から3000種類程度はあると思います。
提供されているASPやSaaSに共通点はありますか。
利用形態を見ると、CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)などのフロントオフィスやグループウエア、電子商取引を支援するアプリケーションなどが多いようです。基幹系システムには、まだなかなか入っていけませんね。
基幹系での利用が進んでいないということで、ASPやSaaSの普及を推進する側としては不満ではありませんか。

日本企業は、データを外部に預けることに対して強い不安を持っています。フロント系のシステムから始めて、ASPやSaaSに慣れてもらえばいい。その後で、基幹系での利用が進むのでしょう。それでももちろん、すべてのシステムがSaaSやASPに移行するわけではありません。
ただASPやSaaSの利用は確実に増えるはずです。業務ごとに5年、10年後にどの程度までASP・SaaS化されるかということを、ベンダにー調査したのですが、まだ利用が進んでいない領域にも積極的にサービスを提供する意向があるのが分かりました。
ASPやSaaSの将来性については確信を持っていらっしゃるわけですね。
時代の流れがそうですから。高額なメインフレームしかなく、コンピュータを自前で持てなかった時代から、ハードの低価格化に伴ってシステムを所有する時代が到来しました。ブロードバンドが普及する中で、今はシステムを持つ必要がなくなってきたということです。持つ必要のない時代に登場したソリューションが、ASPでありSaaSだといえます。
持つ必要がないとは?
システムを自前で持つとセキュリティも考えなければならないし、システムを運用する担当者も必要になります。NGN(次世代ネットワーク)が広がれば、セキュリティはさらに高まる。無理に所有する必要性はないでしょう。
特に情報システムの専任担当者を置くのが難しい、中堅・中小企業のニーズは高いはずです。この点に注目して、行政もASPやSaaSの普及促進を支援してくれています。