日本コカ・コーラ マーケティングオペレーション インターラクティブ・マーケティングアシスタントマネジャーの竹嶋朋子氏
日本コカ・コーラ マーケティングオペレーション インターラクティブ・マーケティングアシスタントマネジャーの竹嶋朋子氏

 日本コカ・コーラは2008年8月から、任天堂の携帯ゲーム機「ニンテンドーDS」向けに、同社が販売する飲料の「Qoo」を訴求するコンテンツをネットで無料配信している。

 キャンペーンでニンテンドーDS向けにコンテンツを提供した狙いと反響を、企画を担当する日本コカ・コーラのマーケティングオペレーション インターラクティブ・マーケティングアシスタントマネジャーの竹嶋朋子氏に聞いた。
(聞き手は中村 勇介=日経ネットマーケティング

ニンテンドーDS向けのコンテンツをキャンペーンで提供した経緯は。

 きっかけは、2008年のQooの販促キャンペーンをどのように展開するかを考えた時に、調査して分かったターゲット層の傾向だ。Qooは飲用者としての3~9歳ぐらいの子供と商品を購入する親がターゲットだ。こういったターゲット層を分析したときに、朝食を食べないといった生活習慣の乱れ、親の食に対する安全意識の高まりといった傾向が見られた。そこで、子供に人気のあるQooのキャラクターを介して、食に対する意識の向上を啓蒙(けいもう)することを目指した。まずは、2008年3月のQooの新商品の発売に合わせてリニューアルしたWebサイトで、食の大切さを伝える紙芝居や、ベネッセとのタイアップコンテンツの提供を始めた。

 一方で、親子の関係が従来の主従的な関係から、より友達感覚になっている傾向も見えた。「Wii」の流行などから、親子をターゲットにした深いコミュニケーションをするには、親と子供が一緒に遊べるコンテンツの提供が有効と考えた。ただ、新たにコンテンツを制作して販売すると多くの費用がかかる。そこで、ニンテンドーDS向けに(Webサイト上のFlashコンテンツを流用するなどして)気軽にコンテンツを提供できる「DSvision(※)」を活用して、Qooのキャラクターを主人公にしたコンテンツなどを提供した。

※「DSvision」は大日本印刷の子会社am3(東京都港区)が運営するサービス。ユーザーは、スターターキット(実売価格3990円)を購入の上、DSvisionの公式Webサイトで漫画、小説などを購入・ダウンロードできる。購入したコンテンツは、専用のmicroSDカードに保存できる。

なぜケータイではなくニンテンドーDSに配信したのか。

 メーンターゲットとなる3~9歳ではケータイよりもニンテンドーDSの方が所有率が高いと考えた。また、親子が一緒に遊ぶには、メールなどのパーソナルな内容が含まれるケータイよりも、ニンテンドーDSの方が向いていると考えた。ケータイ向けではフィルタリングによってアクセスできない危惧もあった。

どのようなコンテンツを提供しているのか。

 大きく分けて二つある。一つはWebサイトでも提供している「ちゃんとたべよう体操」の動画と「食育かみしばい」というFlashを使って制作した紙芝居の二つのコンテンツ。もう一つは、DSvision向けのオリジナルコンテンツ「たべものな~に?」だ。食べ物のイラストが表示され、ランダムに並んだ文字を入れ替えて食べ物の名前を当てるクイズになっている。正解すると、その食べ物が持つ栄養素などの情報を表示する。

 これらのコンテンツに商品は登場しない。Qooのキャラクターを中心にしたコンテンツを親子で楽しんでもらうことで、ターゲット層に対して自然とQooのブランディングができるようにした。

企画をどのように告知しているのか。

 自社メディアが中心だ。例えば、「Coca-Cola Park」のサイトで、QooをモチーフにしたデザインのDSvisionのキットをプレゼントして既に約10万件の応募があった。そのほか、Qooのペットボトルにおまけとして付けるリーフレット(小冊子)でも告知をしている。DSvisionsでのコンテンツは20~30代の女性が多くダウンロードしており、ターゲットである主婦層にリーチできていると考えている。 

深いコミュニケーションを目指した企画をする上での注意点は

 今回の企画ではダウンロード数などよりも、コミュニケーション深度に焦点を置いた。ただ単にQooがかわいいコンテンツを配る程度では、顧客に与えるロイヤルティ向上効果は半減する。今回の企画では、キャンペーン全体でQooが食をサポートする存在という位置付けをして、伝える狙いがあった。何を伝えたいかを明確にした上で、広告色を薄めたコンテンツを通じてメッセージを伝えることで、ブランドイメージが上がり、ロイヤルティの向上につながる。

【修正履歴】
am3よりDSvisionは、出版、映像、教育などのコンテンツ配信を目的としたサービスとの申し入れがありました。記事中にあった「ゲーム」という表記を「コンテンツ」に変更しました。また、ゲームの表記を一部削除しました。[2008/10/21 16:55]