Intelが提唱する,インターネット・アクセスに特化した小型マシンMobile Internet Device(MID)。MID向けのOSとしては,Windows XPとLinuxがあり,IntelはLinux向けのGUIライブラリなどのソフトウエア群「Moblin」を開発している。IntelはなぜMoblinを開発したのか。MIDの方向性は。Intelの担当者に聞いた。

(聞き手は高橋信頼=ITpro


次世代MIDのモックアップを手に持つ米IntelのPankaj Kedia氏
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Windows XPとLinuxの位置付けは。

 Windowsはビジネス向け,Linuxはコンシューマ向けだ。ビジネス向けにはオフィスと共通の環境を望むユーザーが多い。一方コンシューマ向けは体験(Experience)が重要となる。必要メモリー・サイズを小さくし,カスタマイズを容易にし,レスポンスを良くしなければならないが,そのためにはLinuxが最適だ。

Moblinを開発した理由は。

 Linuxディストリビューションは多くの種類がある。それらをMID向けに共通化し,1度書けばどのLinuxでも使えるようにするために開発したのがMoblinだ。

 Miracle LinuxなどがMoblinを採用したMID向けLinuxを開発している。ジャストシステムズがATOK(関連記事),オムロンソフトウェアがかな漢字変換の「iWnn」とOCRの「MobileOmCR」(関連記事),クイックサンがワンセグ,zoomeが動画アップロード・ユーティリティと,様々な企業がMoblin向けにアプリケーションを作っている。2008年9月30日から10月4日まで開催されたエレクトロニクスの展示会「CEATEC JAPAN 2008」の「モバイルコンピューティングPLAZA」ではこれらのアプリケーションが多数展示された(関連記事)。

MIDにおけるWindowsとLinuxの比率は。

 第一世代のMIDは,松下電器産業やクラリオン、レノボ,BenQなど25社以上が30以上のハードウエアを作っている。これまでのところ,60%がWindows XPで40%がLinuxだ。日本はビジネス向けの比率が高いため,もっとWindowsが多くなっている。

 現在開発中の第2世代のMIDでは,この比率は逆転すると見ている。つまりWindowsが40%で,Linuxが60%になるだろう。

Moblinにはどのくらいの開発者がいるのか。

 Moblinはオープンソース・プロジェクトとして開発が進められており,2000人以上のデベロッパーがいる。デベロッパーとは,Moblinにコードをコントリビュートしてくれている人のことだ。

 Intel自身も,250~300人以上の社員をMoblinに投入している。これは極めて大きな投資だ。

MIDには,iPhoneのApp SotreやGoogleのAndroid Marketのような,アプリケーション課金の仕組みがない。

 インターネットこそが最大のアプリケーションであり,マーケットだ。MIDは,50億あるとされるインターネットのページをすべてパソコンと同じように見ることができる。MIDはオープンアプローチを採る。制限された閉じた世界ではない。

MIDの出荷実績は。また今後の目標は。

 出荷実績は非公表だ。今後の予測としては,5年間というレンジで考えれば,1億から2億台になると見ている。MIDは,新しいカテゴリの製品であり,新しい使い方を開拓しなければならない。大事なことはカテゴリを確立することであり,それを啓蒙していくことだ。

2010年に出荷を予定している第2世代MIDのモックアップ
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