大手警備保障会社のセコムがモバイルWiMAX事業に参入する。2009年にモバイルWiMAXの商用化を予定するUQコミュニケーションズからMVNO(仮想移動体通信事業者)として無線設備を借り,ホーム・セキュリティの新たな事業を計画する。セコムで研究開発・企画担当技術開発本部長環境推進本部長を務める前田修司・常務取締役に参入の狙いや計画の概要を聞いた。

(聞き手は,榊原 康=日経コミュニケーション

モバイルWiMAX事業に参入する狙いは。

セコム 研究開発・企画担当 技術開発本部長 環境推進本部長の前田修司・常務取締役
セコム 研究開発・企画担当
技術開発本部長 環境推進本部長
前田修司・常務取締役
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 ホーム・セキュリティ分野で新たなソリューションの展開を計画している。監視カメラやセキュリティ・ゲートを利用した「セキュリティ・タウン」の開発だ。戸建て住宅が密集した区域の出入り口や通路,ゴミ置き場などの共有部分に監視カメラやセキュリティ・ゲートを設置し,不審者の出入りを監視する。戸建て住宅の面開発を手がける不動産会社などと協力して展開することになる。

モバイルWiMAXはどの部分で利用するのか。

 監視カメラで撮影した映像の送受信にモバイルWiMAXを活用する。モバイルWiMAXは下り最大40Mビット/秒,上り最大10Mビット/秒の通信速度を実現できる。監視カメラの映像をリアルタイムに監視したり,蓄積した映像を後で確認したりする用途に最適だ。圧縮せずにきれいな映像を送受信できる。映像は当社だけでなく,居住者がインターネット経由でも確認,監視できる。

 セキュリティ・ゲートは,420MHz帯の特定小電力無線を利用したアクティブ・タグと組み合わせて使う。居住者にタグを配布することで,ゲートを通過した人が居住者かどうかをすぐに判断できる。すでに実用化している監視カメラで異常(人の動き)を自動検知する仕組み(SECOM AX)と組み合わせれば一歩進んだセキュリティを実現できる。監視カメラで通行人を検知し,タグを保持していれば問題なし,保持していなければ監視カメラで確認といった運用が可能になる。

映像のやり取りであれば他の通信手段もある。

 監視カメラを有線で接続するとケーブルを敷設する必要がある。公道を挟む場合は自治体の許可も取らなければならない。無線LANを利用する方法もあるが,家庭で利用している無線LANとの干渉が予想され,設計や運用も大変。モバイルWiMAXが一番適していると判断した。

提供時期と提供料金は。

 UQコミュニケーションズがサービス開始前ということもあり,具体的な時期はまだ決まっていない。料金も未定だが,月額5000円といった水準では誰も契約してくれないと思われる。ココセコム(GPSと携帯電話の基地局情報を使って児童や自動車などの位置情報を確認できるサービス)が月額945円(位置情報の検索回数が10回の場合)なので,それよりも高く5000円よりも安いというのが目安になるだろう。

防犯や防災に次世代高速無線を活用する動きとして,ウィルコムが次世代PHSを活用して定点カメラやセンサーのネットワークを構築する検討を進めている。

 ウィルコムが2008年7月に設立した「BWAユビキタスネットワーク研究会」(関連記事)には当社も参加している。児童の見守りはすでにココセコムで実現しているが,新たな選択肢として期待している。定点カメラで火災を検知するといった用途も考えられる。ただ,こちらは定点カメラで撮影した対象のプライバシや肖像権の問題があり,実用化に向けてまさに検討している状況にある。