オランダのSDL Tridionは,Webサイトを構築/運用するCMS(Content Management System)製品の「R5」を開発する企業である。欧州を中心に500社ほどのユーザーを抱え,2006年の北米に次ぎ,2008年3月に日本法人「SDL Tridion」を設立しAPAC市場に進出した。ITproは,オランダSDL Tridionの製品担当VPとAPAC営業担当VPに,CMSの市場動向と意義について聞いた。
![]() オランダSDL TridionでProducts & Solutions分野のVice Presidentを務めるOtto de Graaf氏(写真左)と,Asia Pacific & Middle East地域のSales担当のVice Presidentを務めるHans de Groot氏(写真右) [画像のクリックで拡大表示] |
SDL Tridionのソフトウエア製品「R5」はCMS製品だが,CMSとは何なのか。R5の特徴は何か。
SDL Tridionの使命は,オンライン・コミュニケーションを支援することだ。このためのツールとして,Webサイトを構築/運用するためのプラットフォーム・ミドルウエアであるCMS(Content Management System)を提供している。製品名は「R5」だ。
R5の付加価値は色々とあるが,キーとなる技術は,我々が「Blue Printing」と呼んでいる概念/技術である。Blue Printingによって,同一コンテンツを利用したマルチチャネル展開/多言語展開などが容易になる。コンテンツを流用した複数のWebサイト間で企業ブランドの一貫性を維持したり,Webサイトの視聴者の属性に応じて提供コンテンツや提供方法を変えるターゲッティングなどが容易になる。
Blue Printingとはどのような概念/技術なのか。
Blue Printingとは,ビルディング・ブロック型のWebサイト構築/運用を可能にするアーキテクチャを指している。Webサイトを構成する要素には,コンテンツ,メタデータなどのプロファイル,レイアウト情報,業務ロジックや他システム連携などのアプリケーションなどがある。こうした個々の要素をビルディング・ブロックとして組み合わせることで,Webサイトを実現するという考え方だ。
Blue Printingの下では,共通の要素を組み合わせた結果として,複数のWebチャネルが出来上がる。個々の要素はXMLベースで管理しており,継承や再利用などが可能だ。管理情報やコンテンツなど個々の要素に対して変更を施すと,その要素に依存したすべてのWebサイトに対して,変更が反映される。
他のCMSでは,リクエストに返答する個々のWebページの単位でコンテンツなどのコンポーネントを管理するケースが多い。こうした他社の方法では,マルチチャネル展開の際,チャネル間でコンテンツやWebページをコピーすることになる。この場合,何か1つの変更を施した際に,コピー先すべてに変更を反映させる必要があるだろう。
Blue Printingのようなビルディング・ブロック型のテンプレート・フレームワークは珍しいのか。特質すべき優位点なのか。
その通りだ。SDL Tridionは,500社ほどのユーザーを擁している。これらのユーザーを対象にアンケートを実施したところ,97%のユーザーが次回もSDL Tridion製品を購入すると回答している。彼らがSDL Tridionを支持する理由が,Blue Printingなのだ。また,InterwovenやMicrosoftのCMSからSDL TridionのCMSへとリプレースするユーザーも多い。
500社のユーザーの傾向としては,製造業がもっとも多い。自動車や製薬,電気などだ。キヤノン,ヤマハ,リコー,トヨタ,ホンダ,オムロン,日産,ダイキン工業など,欧州に会社を持つ日本企業の多くがSDL Tridionのユーザーとなっている。製造業の次に多いのは,旅行会社や航空会社,金融機関,生命保険会社などである。
ユーザー像として目立つのは,こうしたマルチチャネル展開/多言語展開を実施している大企業となる。だが,大企業でなくても,戦略的なWebサイトを運営する会社であれば,大企業でなくてもSDL Tridionのユーザーとなる。こうしたユーザーには,例えば,オンライン・ギャンブルを提供するサイトなどがある。SDL TridionのR5の価格は,一概には言えないが,ミニマムで1000万円程度からとなる。